EVENING SESSION
イブニングセッション
イブニングセッション「第九のきせき」ー五感を超える挑戦
手話で歌う、表現する。チャレンジの先にある新しい「歓喜の歌」
田頭 真理子氏Mariko Tagashira
写真家
聴覚などの障がいを抱えた子どもたちが手話で“歌い上げる”「ホワイトハンドコーラスNIPPON」。曲は、ベートーヴェンの第九「歓喜の歌」。指先から発せられた光が美しい軌跡を描く写真も映し出されます。最初に流れたビデオを見ながら、スタジオには日本のホワイトハンドコーラスNIPPON芸術監督であるコロンえりかさん、写真家の田頭真理子さんが登場。進行を務めるのは佐々木かをりです。
「音楽を、耳の聞こえない人たちが聞くだけでなく手話で演奏する。田頭さんにこの話を伺った時大興奮し、絶対に国際女性ビジネス会議でご紹介させていただきたいと思いました」と、熱く語る佐々木。まずは、田頭さんに、幻想的な写真撮影のきっかけをお聞きします。
「2021年に東京芸術劇場で新しい形の第九をやると知り、練習からずっと追いかけていたんです。彼らを見ていると、本当に手の先から光が放たれたようなエネルギーを感じました。そこで私も新しいチャレンジとして、この第九を写真で表現できないかと思ったんです」
そう語りながら、実際に指先から発光するように作り上げた手袋を見せてくれました。
コロン えりか氏Erika Colon
ホワイトハンドコーラスNIPPON芸術監督
コロンさんは、プロ歌手として活動する中で、このコーラスと出会ったと言います。
「劇場などで歌うとき、そこに耳の聞こえない人がいる場面が想像できませんでした。でも、音楽はもっと深い世界があるはずという気持ちがあり、耳の聞こえない人と一緒に共有できることを探していた時、ホワイトハンドコーラスに出会いました。これを日本の子どもたちと一緒にできないかということで、2017年から活動しています」
「本当にインクルーシブですよね。ジェンダーの場合もそうなんですが、例えば健康と言われる男性がメインだとすると、それ以外の人たちに優しくしてあげるというファーストステージがあるなら、本来のステージはその次で、『みんなが一緒になる』ということだと思います」と佐々木は深く共感します。
さらに奇跡のようなエピソードが次々と語られます。「本番を終えた子どもたちに『あなたにとって音楽って何?』と聞くと、『人をつなぐもの』と、生まれつき、全く聞こえない子どもが答えたんです。それって、本当に核心だと思うんですよね」というコロンさん。田頭さんは、撮影スタジオを真っ暗にしてお互いが見えないときでも、「すごく研ぎ澄まされるというか、集中力が高まって、呼吸が合うという初めての経験をしました」と言います。
2024年2月には、「ホワイトハンドコーラスNIPPON」が、なんとウィーンの国連で第九を発表します!
次の挑戦に向けて、「新たな発想で創造していくことを学んでいる機会で、すごくワクワクしています」という田頭さん。「チャレンジの先にある歓喜を、この会議に参加されている皆さまと分かち合える日を楽しみにしています」とコロンさんも笑顔で語りました。
「もっともっと日々の生活でインクルーシブに、コーラスのようにみんなで力を合わせるものを通じて、世の中が良くなっていくといいなと思いました。子どもたちがそこからまた輝き、誇りを持って生きられる社会になったらいいなと思います」と、佐々木が感激とともに締めくくります。壮大なパフォーマンスとともに表現された、心震える挑戦。その感動をさらにつなげたいと思わせられる、パワフルなセッションでした。