The 28th International Conference
for Women in Business
第28回
国際女性ビジネス会議

AFTERNOON SESSION

アフタヌーンセッション

アフタヌーンセッション企業の挑戦。直面する課題解決

多くの人が働きやすく暮らしやすく、一人ひとりの能力が活かせる制度を。

木下 潮音氏

木下 潮音氏Shione Kinoshita

弁護士

続いて、2022年日本経済新聞が発表した「企業が選ぶ活躍した弁護士ランキング(労務部門)」で日本第1位となった弁護士、木下潮音さんがご登壇。労働問題が複雑になってきている今、日本の企業から絶大な信頼を集める木下さんと「企業の挑戦。直面する課題解決」をテーマに佐々木かをりとのトークを繰り広げます。

1985年から40年近くにわたり企業の人事労務を専門とし、「裁判に勝つというより、裁判をしなくていい関係を作ることに尽力してきた」という木下さん。企業にとっても働く人にとってもハッピーな会社にするための制度づくりに注力されてきました。弁護士になった1985年は、男女雇用機会均等法と労働者派遣法が成立した年であったこと。それまで女性は子どもと同じように保護される立場であり、深夜残業はできないし、長時間労働もできない。働くことが制限されていた。そして、「あまり知らない方が多いかもしれませんが、1999年になって初めて女性は働く環境で男性と対等という法律になったのです」との言葉に、佐々木かをりも「1999年!そんなに最近まで!」と反応。労働に関する法律においては、女性が保護される立場として多くの制限があったという歴史が改めて思い出されました。

そして、40年をこう振り返ります。均等法で女性総合職という言葉ができたように、そこで日本の社会は「男性」、「男性のように働ける女性」、「女性」の3つに、2000年代以降はこれに、もう一つ「性別にかかわらず正社員でない非正規の人」が加わり4つに、分離してしまったのです。
「そこで私は、そんな分離や階層化でなく、みんなが統合して、多くの人が働きやすく暮らしやすく、一人ひとりの能力が活かせる、納得できる制度をつくることが大事だと言い続けてきました」

佐々木 かをり氏

佐々木 かをり氏Kaori Sasaki

株式会社イー・ウーマン代表取締役社長

ところが残念なことに、なかなか変われない企業も多い。「なぜ変われないのでしょう?」と佐々木かをりの問いに木下さんは、「優秀で立派な男性が集まって、日本的な企業システムの中で、よく似た経歴の男性同士が頑張って競争している。そういう企業文化の会社では女性が活躍できないし、変われない」と指摘しつつ、「だから、男性も女性もちゃんと色々な形で活かせるような人事システムは絶対必要。こうあるべきという古い社会規範にとらわれているような制度をつくってはいけない」と熱く語ります。

さらに話題は「Equity」に及び、企業は、男性が中心でも女性が中心でも、その仕事の社会的価値を考えPay equity(同一価値労働、同一賃金)を設計しなければならないこと。賃金が安いと言われるエッセンシャルワーカーや、貧困率の高いシングルマザーや、非正規雇用の人々が、社会の中でしっかりと存在が認められて生活できるような人事制度が必要なこと。働く人が性別や年齢に関わりなくフェアに評価されることの重要性などにも言及。40年のご経験と専門性に基づく、示唆に富んだコメントが続きました。

最後は、「働くとは、毎日新しいことにチャレンジし、新しい成果を出すこと。それが積み重なって日本の会社も良くなってきた」と木下さん。佐々木かをりは、「私たちはその会社のビジョンに参画して働いているわけだから、とにかく貢献する。ビジョンに共感できない人は、自分の持ち味を活かせる別の場所を見つけてそこで成果を出す。そんな健全な社会であれば、みんなが活躍できるのかなと思います」と結びました。

INDEX 各レポートを読む

第1部
第2部