ROUNDTABLES
円卓会議
円卓会議5上を目指す挑戦
企業社会は構造的に「男性OS」、そこを変えなければ。
武藤 裕美氏Hiromi Muto
NEC モビリティソリューション統括部
白河 桃子氏Touko Shirakawa
相模女子大学大学院 特任教授
髙倉 千春氏Chiharu Takakura
高倉&Company合同会社共同代表
「今日ここまでの様々なセッションを聞いていると、企業の中では上を目指す挑戦がしづらいとか、仕組みが適切でないなどの声聞こえてきて、それは私たちの円卓会議のテーマだと思いながら聞いていました。まずは、企業の中で挑戦してこられたご経験を聞かせてください」とファシリテーターの石原直子さんが投げかけます。
「組織に勤めて40年、均等法以前には無かったポジションをつくってきた世代。外資系で責任をもって仕事をする醍醐味を見てきて、最後のフェーズとしてやっぱり社長をやりたいと思って独立した」という高倉千春さんは、長年の人事、人材育成のご経験から「経験がキャリアのすべてだと思う」ときっぱり。
さらに、今まで自分がやってきたことは主に4つだったと振り返ります。まず、異動のアサインメントの透明性を高めること。男性中心だと女性の名前が出てこないので、女性版人材マネジメントをやろうと改革したと言います。二つ目は働き方改革で、三つ目は評価に対するバイアスを取り払うこと。ロート製薬では全く新しい評価手法を導入しました。四つ目は男性の意識改革と、端的に歯切れ良く語ります。
「NECで入社時はシステムエンジニア、途中から営業職。今はモビリティ関係の事業企画を行う2チームを見るポジション」という武藤裕美さんは、「上を目指そうと思ったことがあまりない」と明言。そもそも大学に行く意味がわからなくて、「宇宙人に見えるコンピュータ系の人と話が通じるようになれば意味がある」と思い、工学部に進み、システムエンジニアに。
そして、NECでのご自身の挑戦の例をこう語ります。NECが業績面での成長が見えず苦しかった時期に「NEC Growth Careers」という社内転職制度をつくった。社員がそれぞれ自分のキャリアを成長させることで結果として会社が成長する仕組み。今ではNECの中で当たり前に使ってもらっているが、本当は社外にもつながる仕組みにしたい。「こういった挑戦は、私の大きな野望の中の一つのプロセスとしてやってきました」
ここでファシリテーターの石原さんが、「男性で、野村證券という会社に入社。上を目指すということを意識されてきましたか?」と野村ホールディングス株式会社 グループ人事部長の上嶋基寛さんに問います。「正直、意識していないです」と上嶋さん。「私を含めて、仕事を普通にやって成果が出ればそれ相応になるという文化があったと思う。一方で、それは女性も同じですかというとそうではない。弊社でアンケートをとって“管理職になりたいか”と聞いたら、YESは男性8割弱、女性3割強。それが今の現実で、女性に活躍していただくためにはこの実態を変えていかなければと思います」
上嶋 基寛氏Motohiro Kamijima
野村ホールディングス株式会社 グループ人事部長
石原 直子氏Naoko Ishihara
株式会社エクサウィザーズ
白河桃子さんは、「どう考えても企業社会全体が構造的に男性OSなんです」と言い、それが女性の昇進を遅らせてきたことや均質性のリスクなどを語り、「仕組みを色々つくろうとしているが、構造、人事評価制度など全てが一度チャラにならないとダイバーシティが機能しない」と指摘します。
また、「女性にとってつらい構造は、強者の立場でない男性やWLBを大事にしたい男性にとってもつらい構造。実は多くの人たちが実力を発揮できていないのではないか」とも。
この後、男性OSを変える取り組みや、「なりたがらない女性」の意識を変える方法、働き方改革、マネージャーのロールモデルなど話がどんどん深まったところで、後半は参加者のみなさんからの質問にスピーカーの方々がお答えするインタラクティブな時間へ。
社内でダイバーシティ推進をしている方からは、「数字目標のために無理やり女性を管理職にしたと思っている男性もいまだに多い。どうすればいいか?」。他にも出産育休を経て働いている方が直面する問題、「限られた時間の中でミドル管理職とのコミュニケーションをどう取ればいいか」などなど。また、一人の女性からは、次のステップとして部長になりたいと上司に言ったら「えっ!?」と驚かれたという体験のシェアも。
最後は、スピーカーのみなさんから、「自分がマイノリティ経験のある人はダイバーシティの重要性がわかる」「個人の中での多様な視点もすごく大切」「自分のペースでいいよと伝えたい。一緒にがんばりましょう!」等々、想いの凝縮したメッセージが伝えられました。