REPORTアフタヌーンセッション
アフタヌーンセッション
イエメンで築く「女性が動かす経済」
紛争のなかで起業家をサポート。困難な状況でも、必ず機会はある
サフィア・アルジャブリー氏Safiya Al-Jabry
スモールandマイクロエンタープライズプロモーションサービス(SMEPS)エグゼクティブディレクター
舞台は、朝を迎えている中東イエメンから。紛争が続くこの地でさまざまな課題を乗り越えながら女性起業家支援を続ける、サフィア・アルジャブリーさんが登壇しました。
現在、イエメン開発社会基金の子会社SMEPSのエグゼクティブディレクターを務めるサフィアさん。この前のスピーカーであるウェンディ・テレキさんが事務局長を務める世界銀行グループ女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)のプログラムにより、現地では900人以上の起業家がサポートされたといいます。「紛争の中でどんな成果を上げているか、プレゼンできることをうれしく思います」と、笑顔を見せました。
2015年から紛争状態となっているイエメン。2000万人以上の人々の暮らしに影響が及ぶなか、中小企業をサポートする国家戦略として2005年に設立されたのが、スモールandマイクロエンタープライズプロモーションサービス(SMEPS)です。「中小企業における、紛争のインパクトは非常に大きなものがあります」と、サフィアさん。男性オーナーの企業は19%が閉鎖、そして女性オーナーの企業は42%も閉鎖、さらに73%が金融機関のサポートを受けられないなど、厳しい状況が写真とともに紹介されます。
そんななかで進めたのが、We-Fi の支援を受けたBRAVE WOMAN PROJECT(訳:勇敢な女性プロジェクト)という、女性起業家支援のプロジェクト。そこには2つの要素があるといいます。
「最初は、ビジネスの継続やリスク管理に関するサポートです。女性に対してトレーニングやコンサルティングのサービスを行います。2つ目は、パートナー銀行と手を組み、女性たちが金融機関へのアクセスを受けられるようにしています。ここには商工会議所や通産省などが力を合わせて支援しています」
BRAVE WOMAN PROJECTにより、6000以上のビジネスがサポートされ、62%の方が金融サービスを受けられるなど、さまざまな成果が上がっていることがデータとともに示されます。さらに、質の高い医療サービスを提供する人、コロナ禍でコミュニティにマスクを提供する人、多くの雇用を生み出した食品加工のビジネスなど、生き生きと働く女性起業家たちの姿も紹介されました。
「紛争の前、イエメンの労働力はほとんどが男性でした。しかし、彼らは戦いに行ってしまったので、女性が立ち上がらなければいけなかった。もっとも難しい状況のなかでも、必ず機会はあります。私たちは、このようなことを達成できたことを誇りに思います」
困難のなかでも、女性たちの力を信じて前に歩き続けるサフィアさん。深い感動と、大きな勇気が心にあふれてくる講演でした。