REPORTアフタヌーンセッション

アフタヌーンセッション

なぜDiversityが高い投資リターンに繋がるのか

データが示す、ダイバーシティと企業パフォーマンスの正の相関

キャシー 松井氏Kathy Matsui

MPower Partners ゼネラル・パートナー

今や世界の誰もが知るところとなった「ウーマノミクス」。その概念を1999年に提唱し、昨年は日本初のESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンド「MPower Partners」を立ち上げたキャシー松井さんらが、ダイバーシティが高い投資リターンにつながることをテーマにスピーチします。

前職は、ゴールドマン・サックス証券の日本副会長であったキャシーさん。この20数年の間にさまざまな企業から、「多様性は、企業パフォーマンスと本当に関係があるのか?」という質問を多く受けたと言います。「そのために、いろいろなリサーチに注目してきました」とデータを紹介してくれました。

一つ目に示されたグラフは、アメリカの例です。フォーチュン500社のうち、女性取締役がいない企業と、3人以上いる企業のROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を比較したところ、後者のほうが高いことが示されています。この結果を見せた際の反応は、「海外ではそうだけど、日本はどうなのか」という懐疑的な質問だったそうです。

続いて、「今度は、日本の数字を見せます」と、次のグラフを共有します。「日本の場合、女性取締役そのものが少なすぎるので、管理職の割合で比較してみました」と示されたデータでも、女性管理職の割合が高いほど、増収率もROEも高いことがわかります。

さらに、日本の最大手上場企業のうち、ダイバーシティを推進している企業が相対的に高い株価パフォーマンスを示している。又、アメリカのスタートアップでは女性創業者が男性創業者の半分以下しか資金調達できていないにも関わらず、5年後の累計売り上げ高は上回っていることが明確になりました。

キャシーさんは、「大企業だけでなく、スタートアップでも同じ結果が出ているのは、やはり多様性と企業パフォーマンスには正の相関があるということ。そこには理由があると思います」として、人材確保、イノベーション、リスク管理、資本コストという4つの切り口から、ダイバーシティの重要性を語りました。

「今のように不確実性の高い環境ではESGの要素が後回しになってしまいがちですが、だからこそ、ダイバーシティの価値観をしっかりビジネス戦略のコアに入れることで、より持続可能な成長につながります。この会議に参加する皆さんはわかっていると思いますが、皆さんが属している組織の同僚、リーダーは、このことを信じていないかもしれません。客観的なデータや分析は山ほどありますので、ぜひそれを利用して説得することをおすすめします」
今すぐ誰もがアクションを起こしたくなる、キャシーさんの力強いメッセージを確かに受け取ったスピーチでした。

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