全体レポート

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志高い仲間が全国から集まり、
高い熱量で学び合った「Diversity Leads」の1日

朝8時。ドアオープンの1時間前から、参加者が列を作って並んでいます。期待に胸を膨らませながら、笑顔で名刺交換が始まるこの風景こそ、国際女性ビジネス会議ならでは。オンライン開催の4年間を経て、2024年7月28日(日)、都内ホテルでの朝から終日開催のカンファレンスが5年ぶりに実現しました。

1996年から毎年夏に開催されているダイバーシティカンファレンス・国際女性ビジネス会議は、今回で第29回を迎えます。男性の参加者も2年連続で20%を超え、今年は21.1%に! 各国大使館からのご参加も多くあります。参加者の 69%が管理職または経営層、年齢も10代から70代まで、19国籍にわたる本当に多様な参加者ですが、共通点は1つ。志高い情熱的な仲間たち。国内外から、そんな仲間が一堂に会し、いよいよ会議の幕が上がりました。

最初は岸田総理からのビデオメッセージ。「多様な視点を集めて、より良い未来への第一歩となることに期待します」というダイバーシティで動いていく日本のコミットメントを総理から伺い、オープニングです。まず、毎年、国際女性ビジネス会議の企画・キャスティング・演出など全てを一人で担っている総合プロデューサーの佐々木かをりが、今年のテーマ「Diversity Leads」を掲げ、熱く語りかけます。
「ダイバーシティの目的は、個々の力が集まって、より大きな成果を出すことです。多様な人が存在するだけでは意味がない。力を合わせてプラスを生み出すことが目的です。そのために、経営者や人事は仕組みを作ります。しかし、肝心なのは、そこにいる個人。私たち一人ひとりが、自らの個性を相手が使いやすいように提示し、周囲と協力し、より良い成果を生み出すことが必要です」「今日のこの会議も同様です。夜に、最高の一日だったと感じられるかどうかは、自分次第です。私たちも全力を尽くします。皆さんも全力で聴いて、魂を震わせて、素晴らしい1日を作ってください」

熱い拍手が巻き起こり、続いて基調講演へ。ステージに登場したのは、奇跡のようなつながりのスピーカーです。2015年に高校生として、マッチングスポンサーの支援で参加した時、「私は、10年後にこの会議の登壇者になる!」と心に決めたという木嶋雛子さん。現在は、日本銀行にて国際金融に従事しています。佐々木かをりから、「では、オープニングの基調講演で」と提案を受けた時「私が憧れたあの時のロールモデルの方々だったら、こんな時、イエスと言うでしょう。だから、イエスと答えました」という27歳。その夢を叶えた今、堂々とステージに立ち、「勇気のバトンを受け取り、自分の強みを活かして次世代へ」というパワフルなメッセージと、具体的なアクションを提案してくれました。会場の皆が涙し、心震わせながら聴きました。

2人目の基調講演は、日本人女性初の南アフリカ政府公認サファリガイド・太田ゆかさんです。会場に映し出されたのは、サバンナで象の保護活動を行う迫力の映像。鉱物資源の採掘などにより生息地が奪われている野生動物たちの現状を示し、「消費している私たちが、そういう構図を認識することが大切」と、決して遠い地のことではない生物多様性における課題と、日本に住む私たちができることを具体的に示します。

特別講演のスピーカーは、パキスタンからオンラインで登場。女性たちの活躍を支援するために起業した、Dot&LineのCEOマヒーン・アダムジーさんです。家族のケアなどに時間を費やし、社会へ出たくても出られないパキスタンの女性たちにオンラインのプログラムを提供。「財務的な状況を男性に頼ると、男性がすべての決断をすることになる。仕事をすることで、女性も決断に参加することができます」と成果を語り、国内外での前向きな変化に言及します。

次は、ダイバーシティ経営を実践するリーダーたちによるトークショーです。「ダイバーシティがもたらす企業成長」と題し、NECの代表執行役社長である森田隆之さん、「@cosme」で知られるアイスタイル取締役の山田メユミさんがディスカッション。イー・ウーマンとユニカルインターナショナルの社長を務める佐々木かをりがファシリテートを務めます。「ダイバーシティは相互信頼があるから実践できる」「対立を恐れない」「異質なメンバーが集まるから生まれるサービスがある」など、多様な人がいることによる視点の厚みが作る安全かつ成長性高いビジネスの実態、同時に、多様な事業展開をすることでの企業成長など、いくつものキーワードが熱く飛び交いました。

午前中最後のプログラムは、英語で意見を交わすトークショーです。LinkedIn日本代表の田中若菜さん、バンク・オブ・アメリカ在日代表の笹田珠生さん、駐日ノルウェー大使のクリスティン・イグルムさんが、グローバルなチームの在り方について言及します。NECグループのFP&Aを統括する青山朝子さんの進行です。テーマは、多様な人がいるチームをどのようにマネジメントしていくか。多国籍チームを率いているそれぞれの登壇者から、「リーダーが弱みを見せ、サポートを求めることも大切」「英語が第一言語でない人が多いため、流暢かどうかより、どんなメッセージを伝えたいかが重要」など、数多くの実践的な内容がシェアされました。また駐日ノルウェー大使からは、ノルウェーでの先進事例や大使ご自身が各国で多国籍チームを率いてきたエピソードを伺いました。

ここで、ランチタイムです。着席しての豪華なホテルのコースランチも、このカンファレンスの大きな魅力。同じテーブルの参加者同士で楽しく語り合いながら、つながりを深めていきます。

リラックスして始まった午後のプログラムは、衆議院議員の野田聖子さんによる特別講演でスタート。「世代交代とよく言われるが、その前にやることがある。それは、性別交代。国民の代表である政治家で、1割しか女性がいない。私たち女性自身が意識して気づいていかなければ」とパワフルな言葉で参加者へ呼びかけます。

続いて、ジャーナリストの浜田敬子さんによる能登からのライブ中継です。「崩れた家は解体されず、道路は亀裂したまま。仮設住宅は抽選で、入れない人は自分で何とかしなければならない。忘れられてしまっている。もっといろいろな支援が必要で、今すぐできなくても見通しを示してほしいという声が聞かれます」という言葉に、新たな支援の一歩を探るように皆が真剣に耳を傾けました。

次に登壇したのは、NPO法人Gender Action Platformの大崎麻子さん、高倉&Companyの代表である高倉千春さん、リクルート執行役員の柏村美生さんです。トークショーのテーマは、男女の賃金格差からみる個の活用。ジャーナリストの長野智子さんのリズミカルな進行で進みます。まず、大崎さんからのデータ紹介。「政府が女性活躍で表彰している企業の男女賃金格差が男性100で女性49.6。このままで良いですか」。それらを受けて、「属性によってポテンシャルが制限されないことが重要」「バイアスはあるのが当たり前。それが作用しない仕組みをつくることが大切」など、課題解決への道筋が示されていきます。

続いてのテーマは、「ニューロダイバーシティ」。ステージに上がったのは、駐日英国大使館でサイバーセキュリティ担当官を務めるクリス・キャッパーさんです。17歳のときに自身の学習障害を自覚したクリスさんが、その特性を活かすために「明確なストラクチャをつくる」などの工夫を重ねたこと、最先端のサイバーセキュリティを担う現在までの道のりを、伊藤忠商事常務執行役員の茅野みつるさんの進行でひもといていきました。ニューロダイバーシティ人材は世界のI T業界で引く手あまた。最先端の事例を伺うことができました。

「多様性を活かしてキャリアを開く」をテーマにしたトークショーでは、昭和女子大学ダイバーシティ推進機構客員教授を務める平川理恵さん、内閣総理大臣補佐官の矢田雅子さん、港区長の清家あいさんが登壇。NHK解説委員の山本恵子さんがファシリテートを務めます。多様な経験を重ねてきたスピーカーから「それぞれの年代においてキャリアの積み上げ方を考える」「女性に育児や介護がのしかかる世界は必ず変わる。どうか仕事を続けて欲しい」など、熱いメッセージが次々と発信されました。

「新しい事業を切り開く」と題したトークショーは、パナソニック副社長の堂埜茂さんと、宇宙デブリ回収などを担う実証衛星開発に従事するアストロスケール副社長伊藤美紀さんによるビッグスケールなディスカッション。佐々木かをりの進行により、「歴史ある事業こそ、都市伝説的に存在する仕組みを変えなければ新事業は生まれない」「宇宙を大きなエコシステムとして捉える」など、ダイナミックな話題が展開されていきました。

4つの会場に分かれる「円卓会議」では、参加者が好きなテーマと言語を自由に選ぶことができます。
「人的資本とは?~データから見るダイバーシティ組織の成果」では、各企業で変革を起こしてきたリーダーたちの取り組み、さまざまなデータから読み取る変革の必要性などを参加者の事例を含めながら議論。
「生成AIで変わりつつある働き方とビジネス」では、生成AIの進化の現状を知り、それによってもたらされる働き方の変化、可能性とリスクを掘り下げていきます。
「多様な視点はヒット商品をこう創り出した!」では、ユニークな視点で新たな価値を生み出してきたリーダーの発想と経験を伺い、ものづくりにおけるダイバーシティの可能性を体感するセッションです。
すべて英語でセッションが行われる「How to Empower Woman at Word: Success Stories」では、アイルランド、南アフリカ、オーストラリアの大使館からスピーカーを迎え、女性たちのキャリアを向上させる方法や成功事例をシェアしながら議論していきます。
各会場ではスピーカーが意見を交わした後、参加者も加わってディスカッション。後半の30分間にわたり、参加者からは次々と手が上がります。質問や自社事例の紹介など活発に意見交換しながら議論が深められていきました。

一人ひとりの表情が、朝よりもずっと輝いて迎えたネットワーキングのひととき。まずステージには登壇者、そしてマッチンスポンサーの支援で参加した学生たちとスポンサーの皆さんが上がります。学びと感動を次々に述べ、会場の熱気は最高潮に。ゴールドパートナー企業の紹介の後、ノルウェー大使のクリスティン・イグルムさんの乾杯の合図で、旧知の友のようにつながるネットワーキングのスタートです。ワイングラスを片手に豪華なビュッフェスタイルのディナーを楽しみながら、次々と名刺交換する参加者たち。あふれる情熱と感動を、笑顔や涙とともに皆で分かち合いました。

クロージングセッションでは、佐々木かをりから第30回の開催が2025年7月13日に決定したことが告げられます。
「来年またお会いしたいと思います。ありがとうございました!」
会場からは、大きな拍手が湧き起こりました。5年ぶりに実現した会場開催での国際女性ビジネス会議。リアル開催ならではの心震える熱い余韻のなかで、価値ある一日が幕を下ろしました。

2025年7月13日(日) 開催予定
30

国際女性ビジネス会議