マレーシアから、女性が旅をすることをテーマに活動を続けるマリナ・マハティールさん、そして日本からは登山家・冒険家の南谷真鈴さんと、ジャーナリストの大門小百合さんが登場。旅行が困難となった今、旅することが人生にもたらす意味を改めて考えます。進行を務めるのは大門さんです。
セッション3
トークショー
旅の意味
出かけることが目的じゃない!旅とは自分を探求し、広げること
マリナ・マハティールMarina Mahathir
ジャーナリスト/マハティール元首相長女
女性の人権やHIV患者のためのアクティビストとしても知られるマリナさん。最近の活動では、女性旅行者向けにアジアと中東の情報を発信するウェブサイトを立ち上げています。まずは大門さんが「なぜ、女性向けのサイトを?」と尋ねると、「女性の安全に関する情報が少ないと感じたからです」と答えます。
「女性に対して、旅行会社は買い物情報を出すばかり。真剣に考えていない。女性も冒険したい、文化を共有したい。そのためには、もっと安全に旅する情報が必要です」
旅行業界にも、ジェンダーの課題が横たわっていることを指摘します。
南谷真鈴Marin Minamiya
M Planning Ltd. CEO
南谷さんは、七大陸最高峰を日本人最年少で制覇していますが、「決して冒険家、登山家になりたいと思ったわけではない」とのこと。「“私自身のなかの山”を登り続けてきました。旅することで多くの人に助けられ、視点が変わりました」。そして旅の意味を、「多様性の経験ができ、自分の世界が広がる」と語ります。
マリナさんも「私の親は、旅行を教育機会と考えていた」と続けます。
「自分の住んでいるところにずっといたら、みんな同じことを考えていると思ってしまう。世界は巨大で、いろんな人がいて、物があり、方法があります。でも、同時に共通点もある。それを理解することはとても重要です」
自分の世界を広げる旅行。しかし、物理的に困難な今、できることは? マリナさんは「オンラインのフォーラムを開催し、旅行会社のCEOなどとディスカッション。とても役立つトピックになりました」。南谷さんも「マリナが今言ったように、オンラインでロンドンやシンガポールの企業とつながって仕事をすることで、いろいろな文化を家にいて学べる。素晴らしい体験ができています。また、友達がバーチャルで旅をするキットを作ったので、物理的な旅行以外にも楽しみが広がっています」と、笑顔を見せます。
大門小百合Sayuri Daimon
ジャーナリスト
元ジャパンタイムズ執行役員・編集局長
まだまだ話が尽きない旅行の話題ですが、「時間がきてしまったようです」と大門さん。「Go Beyondは外に出ることではなく、内面に向かって自分を探求すること。それで世界を別の目で見ることができるようになる」と南谷さん。「Go Beyondのさかさまは、制限。今の状況のように物理的に制限を受けても、自分のなかには制限を設けなくていいんです」と、マリナさんも参加者の背中を押します。「私もいろいろなところに旅行しました。また旅をする日まで、デジタルで、そしてクリエイティブに世界を広げましょう!」と、大門さんが「出かける」だけでない旅の楽しみを呼びかけ、刺激的なセッションが終了しました。