「おはようございます。ジュネーブは今、日曜の朝10時です」
ステージはスイスへ飛び、WHOの進藤奈邦子さんがご自宅から登場しました。昨年の国際女性ビジネス会議に引き続き、今年もCOVID-19の最新情報を発信してくださいます。
第5セッション
講演
Covid-19と暮らす
日本人のクリエイティビティと慎重さをあわせて、危機を乗り切る
進藤奈邦子氏Nahoko Shindo
WHO(世界保健機関)
感染症危機管理 シニアアドバイザー
最初に示されたのは、21世紀に入ってからの感染症の経緯です。
「SARS、鳥インフルなど、5年から10年に一度、世界規模で広がる感染症が起こっています。さらにWHOで把握している『パンデミックの芽』は、1年間に約170件です」
実は、私たちの日常のすぐ近くに危機が迫っているという事実。また、全世界に張り巡らされた航空網によって人々が移動するようになったことも影響していると言います。
続いて、過去24時間で集計された各国の感染者数がグラフで表示されました。症例数の多いアメリカ、インド、メキシコの変化、ヨーロッパ各国の推移、ワクチン接種の進度など、世界各国で今まさに起こっている状況が手に取るようにわかります。そんな中で日本はどう評価されているのかが、データとともに解説されました。
「日本の患者数、死者数はG7の中で圧倒的に少なく、ジャパンミラクルが続いていると世界は見ています。しかし、日本国民の不安感は高い。特に政府に対する不信感が、皆さんの判断力を邪魔してしまったと思います」
その状況を、私たちはどう乗り越えればよいのか。進藤さんは「WHOは科学的な情報を集めて分析しているので、ぜひ参考にしてほしい」と、言葉に力をこめます。
イスラエルなどのワクチン接種率が高い国で、なぜ感染拡大が続くのか。そして、今後の見通しは? 正確な分析に基づく貴重な情報が、わかりやすく解説されていきます。
「抗ウイルス薬ができれば、ゲームチェンジャーになります。そして一番明るいニュースは、子どもたちは軽症であるということ。人類の将来は守られているということです」
前向きに締めくくられたスピーチの後、佐々木かをりが「欧米では既に動き始めている経済が、日本では止まり続けています。進藤さんならどんなふうに提案しますか?」と問いかけます。すると、「慎重なメンタリティが日本を守ってきたと思いますが、これからはトップダウンだけでなく、ボトムアップの力も必要です」という答えが返ってきました。
「ひとつで全部を解決できる手段はないので、いくつも重ねていく。柔軟性と即効性、日本人のクリエイティビティと慎重さをあわせた独自のスタイルでやっていってほしいと思います」
最後に「日本はいいところを伸ばさず、悪いところを叩く反省会的な風潮があるので、成功例をつぶさないでほしい」とも。COVID-19の最新情報とともに、日本のイノベーティブな解決策への道筋が示された講演でした。