各国駐日大使からジェンダー平等の先進事例を伺った後は、クォーター制をめぐるトークショーです。
「女性国会議員を増やすため、超党派による勉強会の事務局長をしている」という長野智子さんは、「20年間ニュースキャスターをやってきて、少子高齢化、労働人口減少など日本の課題の根底にジェンダーギャップがあると感じている」と言います。
第3セッション
トークショー
クォーター制は役立つか?
クォーター制を入れることで、一足飛びに何十年分程の前進がある
リーネ・アウネ氏Line AUNE
駐日ノルウェー大使館
公使参事官/臨時代理大使
まず、クォーター制発祥の地であるノルウェーのこれまでの道のり、貴重なストーリーを話してくださったのは、駐日ノルウェー大使館公使参事官のリーネ・アウネさん。2002年以前は株式上場会社における女性役員の比率は5~7%にとどまっていたが、2002年に男性の貿易産業大臣による強力なイニシアチブでクォーターを企業の取締役会に義務づけた。2004年には法案が通過、2006年に施行、2008年には女性役員40.7%を達成したと振り返ります。このクォーター制には厳しい罰則があり、違反すると「上場廃止」になるそうです。
アキレス美知子氏Michiko Achilles
SAPジャパン株式会社 人事戦略特別顧問
横浜市参与 男女共同参画および人事制度担当
三井住友信託銀行 取締役
G20 EMPOWER日本共同代表
これを受けてアキレス美知子さんは「上場廃止というのはインパクトがある。日本でも企業は努力しているがもっとドライブをかける必要がある。経団連が2030年までに30%という宣言をしているので、これを実現するために企業の自助努力だけでなく法制としてもプッシュできると良い」と言い、ご自身の考える具体的な提案をいくつか紹介されました。
クォーター制に反対している人へのアプローチは?との問いかけに、リーネ・アウネさんは、「2002年に女性役員のクォーター制導入の議論が始まったとき、女性からでさえ多くの反発があった。しかし当時の貿易産業大臣は、自主的な対策に頼っていては、取締役会での男女平等という目標を達成するのにあと200年はかかると言って説得した。クォーター制の導入前、自主的な措置しかなかった頃は、女性役員数は10年間でわずか2%しか増えなかったが、クォーター制を義務付ける法律を導入することで、数十年かかっていた進歩を一気に飛躍させることができる」と指摘。「自発的な対策に代わる、クォーター制の活用についての対話が必要です」と述べました。
アキレスさんは、「ノルウェーは2002年から4年かけ、その後2年の猶予を与え、全部で6年かけてやっている。その考え方を応用できるのではないか。日本でも2030年までの過程を実現しやすいように、官民の連携をしてゆくといい」
F:長野智子氏Tomoko Nagano
キャスター/ジャーナリスト
さらにリーネ・アウネさんは、ノルウェーの元首相の「もっとも重要な資源は石油でなく人材である」という言葉を引用。アキレスさんは世論を喚起するための教育やコミュニティにおける課題なども指摘。個人の体験や知見、アイデアまでが惜しみなくシェアされて行きます。
最後に「この秋の総裁選、衆院選。どういうリーダーが今の時代に求められているか。どうすれば女性に限らず多彩な意見を政策に反映できるのか。そういうこともぜひみなさんで議論してほしいです」。長野さんがこう締めくくり、クォーター制を考える第一幕目となるトークが終了しました。