トークショー宇宙に広げる

  • 伊藤 美樹
    伊藤 美樹

    株式会社アストロスケール
    ゼネラルマネージャー


全く違う分野の人達の新しい視点が、より大きなものを生む力になる

トークショーの最後は、話題が宇宙へとスケールアップ。宇宙まで視野を広げると一体どんな世界が開けるのか。宇宙を舞台にビジネスを展開されている女性リーダーお二人の登場に、熱い期待が会場いっぱいにみなぎります。

まず、映像に映し出される地球の周りに集まる真っ赤な点。これが、宇宙ゴミです。GPSから天気予報、衛星放送、電子商取引の時刻同期まで、いまや私たちの暮らしのインフラとなっている宇宙技術を支える衛星。これから宇宙をさらに有効利用していこうとする中で、脅威となっている宇宙ゴミ(スペースデブリ)を掃除するのが、伊藤美樹さんがゼネラルマネージャーを務めるアストロスケールのビジネスです。2020年、世界初の宇宙ゴミを除去するための人工衛星が打ち上げ予定だといいます。

岡島礼奈さんが立ち上げたのは人工的に流れ星をつくる会社。ただ、エンターテイメントのために流れ星を作っているのではありません。この一粒一粒が、宇宙における科学的な情報を収集して、宇宙開発や気象予測などに役立てられるという、世界初の試みです。この流れ星の素となる粒を載せた人工衛星を打ち上げ、粒を宇宙空間に放出し、再度大気圏に突入させて発光させる。それを地球から見ると流れ星に見えるという仕組み。会社を設立したのが2011年。10年越しの実現ということで、2020年5月には世界初の人工流れ星が広島瀬戸内地方で見られるそうです。

何とも夢のようであり、でもそれが現実のビジネスであることに、みんなの目が輝きます。ファシリーテーターの小島さんが、宇宙に関心を持ったきっかけを尋ねると、「中学生の時、映画『インデペンデンス・デイ』の宇宙船の造形美に魅了されたのがきっかけ」と伊藤さん。一方、中学生の頃に『ホーキング、宇宙を語る』を読んで宇宙にのめり込んだという岡島さんは、最初は研究者になりたかったが、他のやり方で宇宙科学に貢献できないかと思い、金融業界に入ったという経歴も。

また、「宇宙の世界は理系で男性が多い分野だと思うが、女性であるために不利だったことは?」との問いには、伊藤さんは、「技術の場合、真理は一つなので、男女差は特に意識してこなかった」。岡島さんは、「それが不利かどうかはわからないが、意思決定を行う場面やベンチャーキャピタリストは男性がほとんど。宇宙は男の子のロマンだよねと無邪気におっしゃる方がいたりしますが(笑)」と、お二人ともジェンダーによるデメリットを意識することはあまりなかったようです。

後半は、ビジネスをスケールアップするための課題について。
「新しい視点という意味で、哲学、アートなど全然違う分野の人と積極的に関わっている。会社のメンバーもバックグラウンドが宇宙でない人が多い。その方が、より大きいものが生まれる」と岡島さん。「宇宙の用途や技術も、いろいろな分野の知見を集約して変えていかなければならない。それがスケールアップにつながる」と伊藤さん。

「私も『インデペンデンス・デイ』は観たし、『ホーキング、宇宙を語る』も読んだけれど、宇宙を自分の仕事にするなどとはただの一度も考えなかった。自分の中に刷り込まれた“女の子バイアス”、ジェンダーバイアスがあったのかも。お二人は本当に素晴らしい!」と、小島さんが讃えると、会場中に拍手が轟きました。
地球から宇宙へ、夢が無限大にスケールアップするトークショーとなりました。