Leaders matter
女性のアジェンダが変われば国も変わっていく。あなた自身が希望になってほしい。
「この会議のために34時間かけて来てくださった」と、佐々木かをりの紹介とともに登壇したエジプト国家女性評議会(NCW)議長(女性担当大臣)のマヤ・モースィーさん。20年以上にわたって女性の進歩と基本的権利を守る活動に身を投じ、 国連開発計画アラブ地域ジェンダープロジェクト担当官、国連女性基金のエジプト国事務所長、エジプト文部省の女子教育エンパワーメントプロジェクト担当などを歴任されてきたマヤ・モースィーさんの熱いチャレンジのストーリーをお話いただきました。ファシリテーターは、彼女をよく知る一人、加藤美和さん(UN WOMENアジア太平洋地域部長、前エジプト国事務所長)です。
開口一番、マヤ・モースィーさんは、「アラブの春は、エジプトでは冬だった。特に女性にとってつらい時期だった。そして、女性に対する差別的な行動や法律、憲法上の男女平等を取り上げられるなど、女性のアジェンダが尊敬されない時代だった。子どもたちをこんな国で育てたくないと、エジプトの女性たちはすべてを犠牲にして闘った」。
その結果もあり、政権変換後の2014年には、雇用機会均等、地方議員の1/4は女性とする規定などをはじめとする男女平等、女性と子どもの権利を盛り込んだ新しい憲法ができ、2015年の選挙では国会議員の女性比率がそれまでの1.9%から一気に15%まで伸びるという快挙。そして、新生国家女性評議会ができ、マヤ・モースィーさんが2016年議長に就任。同年、初の大規模全国女性地位向上キャンペーンを開始。「2017年をエジプトの女性のエンパワーメントにフォーカスしてお祝いする年、草の根からトップマネジメントまで参加する『女性元年』にしたいと訴えたところ、シーシ大統領がトップから掛け声をかけてくださいました。」と、力を込めて語ります。
加藤さんは、「今日のこの会議の最初のスピーチで、小池都知事がファーストペンギンの話をされたように、マヤさんはずっとその最初のペンギンになることをして来た女性。プライベートでは、この女性担当大臣という要職に就いてから、昨年お子さんを出産された。そんなマヤさんの私生活についても聞きたい」と水を向けます。
その言葉を受けて、「まさかペンギンとして最初にジャンプすることになるとは思わなかった」と微笑むマヤ・モースィーさん。「それ以前は国連の中で上を目指そうと思っていた。でも、自分の国が、政府が、自分を求めているからにはと、夫とともに、国連職員をやめて国に尽くそうという決断をした。そのとき妊娠もしていた。この子のためにも、国が平和で未来を楽しみにできるようでなければならないと思った」と、ジャンプのストーリーを明かされ、多くの賞賛のまなざしが会場から注がれました。
女性元年の2017年の次は、「地方議会選挙で女性の議員率を35%に引き上げたい。閣僚の中での女性率も、女性の起業家も増やしたい」と、熱い言葉が続きます。
最後には、「子どもがいる同僚を尊重してほしい。子どもには夢を育て続けるように伝えましょう。今ここにいるみなさんが素晴らしいロールモデルになるはず。私も10年後、娘と一緒に、この国際女性ビジネス会議に参加したい」という力強いメッセージ。
女性と子どもの未来のために闘い続け、誰よりも最初に海に飛び込んで来たマヤ・モースィーさんの人生を讃えるかのように、拍手が響き渡りました。