変わる取締役会
NOと言える人、社長をクビにできる人、自由に本当のことを言う人が居ないと、
取締役会は駄目になる。
自らが社長であったり、上場企業の社外取締役をつとめるなど、「取締役会」経験の豊富な登壇者たちが現状をどう見ているのか。取締役会は、どう変化してきているのか、今後のあるべき姿とは? 取締役会の最前線から考えるディスカッションがはじまりました。
「NOと言える人、社長の私を躊躇なくクビにできる人」。そんな人に取締役会に入って欲しいと口火を切ったのは、数多くの企業のトップを経験し、現在はアルヒ株式会社のCEO兼COOをつとめながら社外取締役もされている浜田宏さん。アルヒでは、「自分が思い描いて来た理想的な取締役会をつくろうとしている」。さらに、ご自身が取締役会にのぞむルールとして、それが社外であろうと社内であろうと「嫌われても憎まれても、正しいことを正攻法で言う軸を保つことを自分に課している」とも。
野村信託銀行株式会社 代表執行役員社長、野村ホールディングス株式会社 執行役員バンキング担当である鳥海智絵さんは、過去に野村ホールディングスの取締役会の事務局として社外取締役へのレクチャーなどをされていた経験から、「今の取締役会をなるべく身のあるものにしたい。そのためにはまずイシューを明確にすること」だと言います。さらに、全員が野村グループの役員経験者である取締役のみなさんに対し、「野村信託銀行がどうあるべきかをグループ全体の観点から言ってほしいという期待値があり、そのような問題意識を私のほうから提示したい」。
コスメ情報サイト「@cosme」を立ち上げ、1999年に共同創業した株式会社アイスタイルの取締役COO、株式会社ISパートナーズ代表取締役社長、そして今年6月から株式会社かんぽ生命保険とセイノーホールディングス株式会社の社外取締役をつとめる山田メユミさんは、創業から19年になる現在の取締役会に対する課題と危機意識をこう語ります。「今後のさらなるビジネス発展のためには、ネットベンチャー気質の色強い今の経営ボードとは全く異なる領域の経験やノウハウをお持ちの方に取締役やマネジメントとして加わって頂きたい」。そのためにボードメンバー間で度々社外役員の人選について議論していると言います。
イー・ウーマン、ユニカルインターナショナルの社長であり、現在、日本電気、小林製薬、日本郵便、エージーピーと4社の社外取締役をつとめる佐々木かをりは、自身が取締役で体験して来た様々な事例を挙げて、本音のディスカッションと取締役のプロセスの関係を、他の登壇者と議論します。
これを受けて浜田さんは、「女性のほうが社外取締役に向いている」と断言。なぜなら、「嫌われたくないオジサン達ではなくて、佐々木さんのように身も心も解き放たれて自由に本当のことを言ってくれるのは女性のほうが多い。そういう人が居ないと駄目になる」と、声に力を込めて直言。
後半、全員参加型のディスカッションタイムに入ると会場からは次々と手が挙がり、質問が続きます。会場の参加者にも、取締役の役員、役員会事務局スタッフなどがたくさん。IR部門の責任者からは「社外取締役は機関投資家との接点がないではないか」と指摘すると、浜田さんが「そこは実は盲点。すごいポイントを突かれた。質問から刺激を受けるというインタラクションは楽しい!」と称える場面も。
登壇者も参加者もフラットに意見を述べ、知見や体験をシェアしあう場。全員参加型のディスカッション。それも、取締役会というテーマで最前線の議論が進む、国際女性ビジネス会議を象徴するような円卓会議となりました。