円卓会議204
「国際機関の日本代表として働く」
国際労働機関(ILO) 駐日代表
国連広報センター所長
OECD東京センター所長
株式会社インテカー 代表取締役社長 内閣府本府参与
※ Fはファシリテータです。
日本には26の国連の事務所があり、その8つで女性が所長・代表を務めています。このような国際機関で働くとはどういうことなのか。その中でリーダーとして選ばれるための資質とは? 各組織の代表者たちが一堂に会するこの会議で、さまざまな体験や考えをシェアしていただきます。
上岡 恵子さん
根本 かおるさん
ファシリテーターを務めるのは、企業の育成やベンチャー支援コンサルタント、世界各国の企業研修も担う株式会社インテカー社長の齋藤 ウィリアム 浩幸さん。昨年から内閣府本府参与に就任されています。
「現在出資している19社のうち、15社が女性経営者です。日本を救うのは女性ですね」
齋藤さんの言葉で、会場の皆さんの表情が輝き、一気に明るいムードに包まれました。
登壇者の一人、上岡 恵子さんは、「女性に大学は必要ない」という両親の考えで大学に進学せず、社会人となってから自力で米国の大学に入り、会計学を学んでいます。外資系銀行などを経て、1989年よりN.Yにある国連開発計画(UNDP)、その後にジュネーブの国際労働機関(ILO)、さらにバンコクで、ILOアジア太平洋総局次長を務め、2年前に帰国。現在はILOの駐日代表を務めています。
「日本は先進国のひとつと考えられていますが、ジェンダーにおいては後進国です。国際機関にいると、自分が女性であることを意識させられることはほとんどありません」
そして、ひとつの国がすべてにおいて先進ということもないため、どんな問題でも世界全体を見据えて考える必要があることを強調されました。ジェンダーも含め、日本だけで解決できる問題は少ないことを痛感させられます。
村上 由美子さん
齋藤 ウィリアム 浩幸さん
上岡さんと同様、根本 かおるさん、村上 由美子さんも民間での仕事の経験があります。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)での難民支援を経て、現在は国連広報センター所長を務める根本さんは、フリージャーナリスト、テレビ局での勤務も経験。「民間でスキルを磨いてから、国際舞台で横展開というのも十分可能。国連の広報はほとんどがマスコミ経験者」と言います。「国際機関にチャレンジしたいが、40代でも可能ですか?」という会場からの質問に「47歳で国連デビューした人を知っています。いろんな背景の人がお互いにリスペクトしながら働いているのが国際機関。夢をあきらめずにトライしてください」とエールを送りました。
「私もコネなし、40代後半で国際機関に入りました。ぜんぜん遅くありません」と力強くコメントしてくださったのは、OECD東京センター所長の村上 由美子さんです。
「私は昨年9月から現職ですが、それまでの20年間は金融の仕事をしていました。この経験を活かして国際機関に行きたいと思っていたところ、OECDのヘッドの公募があり、採用となりました。民間も含めた公募はまだ珍しいパターンですが、私のようなケースが増えるといいなと思っています」
さらに、日本の企業と国連の違い、日本人はどう見られているか、日本ではなく国際機関で働くモチベーションとは……など、会場から次々に出る質問に皆さんが答え、議論が深められていきました。「日本の問題は世界の問題。国境は意味を持たない。日本、海外という枠で考えなければ、みんながbest practiceを共有できる」という村上さんの言葉には登壇者も会場の皆さんも深くうなずきます。
語学についての質問では、齋藤さんからも「世界の標準語は英語ではなく、ブロークン・イングリッシュ。遠慮せずに、もっと自分を光らせて!」とアドバイス。大きく視野の広がる熱いディスカッションになりました。
重松 敏子 さん
私がこの円卓会議を選択した理由は、会社の同僚から彼女の娘(高校1年生)の夢の話を聞いたからでした。その夢は国際機関で働く事。正直、私には全く選択肢として無かったので、国際機関で働くという事はどういう事なのかを知りたいと思いました。
この円卓会議では、高校生や大学生など若い世代の質問が多く、刺激的でした。また、この円卓会議で知る国際機関の職場に対しては、男女関係なく民間で専門的スキルを身に着け、チャレンジし続ける前向きなパワーを持つ40代以上の職場として大変魅力を感じました。
特に「日本も海外も問題は同じ。今の日本の問題はやがて世界の問題になる。」という言葉には気付かされました。日本で日本の為に働いていても、それは世界の為になり、その逆もまたしかりなのだと。しかし、同時に若い世代の女性が海外で働きたいと夢見る理由には日本の女性が日本で働く環境への絶望があるのではないかとも感じました。ただ一人の人間として自分の実力を試してみたいのに、日本では大きな男社会の壁がある。この壁を子供世代に崩せないまま残すのか。私はこの円卓会議で女子高生の夢が含む絶望にも気付かされました。
内田 容子 さん
公的な機関で働く方々が日々感じている率直な気持ちを伺うことが出来て感動しました。国連では違いがあって当たり前、女性ということを意識することなく働けること。また、何かをする時には、国籍や立場を公平にするなど、その当たり前の環境をつくるための工夫がされていることが素晴らしいと思いました。民間企業では差はあるものの、少しずつグローバルな活動に取り組み、様々な違いを受け入れています。日本の問題は世界の問題、世界の問題は日本の問題という中で、ベストプラクティスを共有していくことが大切だと実感しました。
根本さんの「法務、財務、人事、広報など、民間企業で培ったチカラを国際的な公共機関で生かせる」という言葉は、自分のチカラを社会に役立たせるという観点で大きなキャリアパスの1つだと思いました。
また、村上さんからはマネジメント層への提言として「日本人以外も、女性は自分の仕事をPRしたり、ボーナスの交渉をしたりすることが上手ではないので、部下をみる時にそれを解った上で全体をみることが大切」という組織運営についてのコツも教えて頂くことが出来て参考になりました。
Willow さん
現在、大学生のキャリア支援の仕事をしていますが、最近特に女子学生から国際機関で働きたいという希望を多く聞き、情報収集のためにもこのセッションを選択しました。私にとって、国際機関で働くということは、未知の世界でしたが、お話を伺いながら、「『成長したい、学びたい』というぶれない自分の軸があることで、活き活き働くことができる」というご意見は、働くステージの違いはあっても、働くことへの意識は同じことだと感じました。ただ、日本企業と違うことは、女性が活躍できる環境が当たり前にように定着していること。女子学生達にはぜひこんな環境で夢を実現してほしいと思うと同時に、私ができることは、彼女たちが今回のスピーカーに続くリーダーに育つように、国際機関は「多様性あふれる環境でお互いがリスペクトしあう働き方ができる魅力ある環境である」ことを彼女たちに伝え、就職できるように支援していくことだと思いました。さっそく、セッションで紹介された「国連広報センター キャリア・セミナー」を学生達へ紹介していますので、その感想を楽しみにしているところです。
やっちゃん24 さん
国際機関で日本代表として働く方々はどのような方でどんな視点をお持ちなのか知りたい!と思い、このセッションに参加しました。強く印象に残っているのは次の2点です。
1点目、国際機関で働くためには、「キラッと光るもの=強み」と「多様性のある環境の中でコミュニケーションを図りながら成果を出していける力」がベースに必要であるということ。1つのポストに数百名が応募しその中から採用されるとのことで、「何ができるか」を明確に表現、実行できるものが必要なことを深く理解できました。
2点目、上岡さんがおっしゃった「1つの国が先進国と思っていてもそうではない。先進国と思っていても視点を変えると違うケースもある」という趣旨のお話。国を見る際にも多角的なものの見方が必要であることはそのとおりですが新鮮でした。
固定観念にとらわれずいろいろな情報を吸収し、自分で考え気づくことの大切さを再認識しました。以上2点は日々意識し実践すると現在の仕事でもより充実したポジションにつくことができると思いました。難易度は高いですが、少しずつでも実践していきたいです。
hiroko810 さん
国際機関の日本代表と言う立場の3名の方の話の中に何度も出てきた言葉が「自分に何ができるのか?」です。自分の売り、強みが女性であるからと言うより、自分はと言う視点で語るのが大切であると言う事です。
女性だからと言う視点で、不利益を感じる事が少ない国際機関だからこそ、世界中にある女性に関する問題に寄り添える、それぞれの立場で、経済、教育、情報など色々なレベルで取り組む事の大切さに広く関われるのだと思いました。
参加者からの質問で、日本にも問題があるにも関わらず世界の問題に取り組む理由はと言う答えは、日本の問題は世界の問題、日本で問題があるのにと思わず国境はない、共通の問題であり、世界からでも、日本国内の問題からでもどちらからと言う区別なく取り組む事でどちらの問題もつながっているので解決になると言う話は、国際的な働き方をしたい人にとって大きな力となる言葉でした。軸があればどこにでもつながっていて、自分が何をしたいのか、ひとりひとりが自分らしく生きる事が問題解決になるのだと感じました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。