円卓会議203
「未来を動かす子どもたちを育てる」
NPO法人CANVAS理事長
株式会社デジタルえほん 代表取締役
慶応義塾大学准教授
品川女子学院 校長
新日本有限責任監査法人
シニアパートナー
Winning Women Network 代表
文部科学省 文部科学事務次官
一般財団法人 International Women’s Club JAPAN 代表理事 ヒーローズ エデュテイメント株式会社 取締役
※ Fはファシリテータです。
石戸さんと竹村さんは小学生を対象とした新しいプログラム、漆さんは女子中・高生が通う学校の校長、金子さんは女性の起業支援、山中さんは文科省で日本全体の教育をご担当……。それぞれのフィールドで、教育におけるゲームチェンジを実践しているみなさんを迎え、未来を動かす子どもたちを育てるには何が必要かを考えるセッションがはじまりました。
石戸 奈々子さん
漆 紫穂子さん
最初のお話は、「小学生に新しい学びの場をつくることにチャレンジしている」石戸さん。昨年の国際女性ビジネス会議に続き2度目のご登壇です。「いま教育に必要なのは、子どもたちが多様な背景を持った人々と協調しながら新しい価値を生む力をはぐくむこと。そのために、主体的で協調的で創造的な学びをつくる活動を推進している。」とNPO「CANVAS」の活動を紹介、「そんな学びから生まれてくる子ども達こそゲームチェンジャーになれるのではないか」と笑顔で語ります。
続いて漆さんは、ご自身が校長をつとめる品川女子学院について、「なんでまだ女子校?と聞かれることがあるが、今だからこそ女子教育。これから少子化の国を支えるのは女性の力」とし、M字カーブの凹みはじめである「28歳」をゴールとして、その時点で仕事も子どもも諦めないための女子中高教育を推進している、起業マインドを持つ女性を育てることをテーマとしていると、話されました。
金子 裕子さん
山中 伸一さん
「女性の人生のさまざまな変化に対応する一つの手段として、自分がきちんと責任をとれるアントレプレナー精神がとても重要」という金子さんは、起業支援の活動を通じて、女性の3つの課題を指摘します。1つは、女性はリスクを取ることに慣れていないので、失敗しないが大きくなれない。第2に、周りを巻き込むことが不得意で小さくまとまってしまう。3つ目は、感覚に頼ってしまう傾向があるが、人に納得してもらうには数値化も必要との言葉に、会場からは多くの頷きが。
そして、文部科学省で教育を担当されている山中さんは、OECDと文科省が中心となってはじめた東北の教育復興プログラムについて、被災地の中高生100人が今年8月末にパリで世界に発信するイベントを行うことなどを紹介。「これからの教育をどう変えて行けば良いのか、いろいろな力を総合的に実行するプログラムが日本の教育の中に必要」と述べます。
竹村 真紀子さん
ファシリテーターの竹村さんは、息子さんが小学校に入った時の体験から、「偏見も躊躇もなく、なんでもどんどん吸収する小学生にチャンスがない!」と感じて「Little Ambassadorsプログラム」を開始。今までに45か国以上の大使館のサポートにより、子どもたちが多様な国の文化を体験するプログラムを実施し、「子どもの視点と意識を変え、器を広げることが大切」と力を込めて語りました。
さらに話題は、子どもに「チーム」や「組織」を体験させることへと進み、漆さんが学校で実践しているチーム運営や役割分担の話、金子さんがリーダーとフォロワーの話、山中さんが大学教育での「プロジェクトベーストラーニング」についてと、スピーカーそれぞれのフィールドにおける貴重なご体験や知恵をシェア。また、石戸さんは、ご自身が行っているワークショップ型のプログラム、協働学習、海外で進んでいる「反転授業」、そしてICT教育について言及。すると今度は漆さんからもICT教育の実例が……と、次々に最新情報や実例が差し出されていくうちに、セッションは後半へ。
ファシリテーター竹村さんの提案で、今まで会場で話を聴いていたみなさんが6、7人のグループになって感想や提案を話し会う対話の時間が設けられました。参加者一人ひとりが熱心に語り、よく聴き、時に笑い合い、あっという間に10分が経過。
グループで話し合った中から「文系理系システムをなくそう!」との提案が出て拍手喝采が湧き起こるなど、熱く盛り上がる中、最後はスピーカー全員が一言ずつ「子どもたちをゲームチェンジャーにするために必要なことは何か」を述べて終了となりました。
井口 靖子 さん
どの円卓会議のテーマも聞いてみたくて困りましたが、今の私のメインテーマでもある「教育」を選んでみました。
議長役のコメンテーターの皆さんのお話がいろいろな角度からで面白かったですし、漆紫穂子先生が校長を務められる品川女子学院で私も学んでみたかったなと思うほど素敵な校長先生を知ることができました。
しかし、さらに面白かったのは、席の前後の方達とグループッセッションしたときです。直接意見を交わせるグループセッションは、年齢も性別も仕事もいろいろな立場の方の集まりでした。みなさんの意見にその都度驚いたり、うなずいたりしながらあっという間に時間が過ぎました。あと30分くらいやっても、せめてあと15分くらい時間があったらもっと面白いことになったのではと思いました。円卓会議は、議長だけでなく、みんなで作るものだなと実感した瞬間でした。
参加する前にプログラムを見たときは、正直長い一日になるだろうなと思っていましたが、始まってみるとノンストップでどんどん時間が過ぎていきます。こんなに有意義な時間の使い方を年に一度はしてみたいと思いました。
水谷 多加子 さん
学校教育、学校以外での学びの場において実践されていること、大切にしていること、目指していることの等の紹介がありました。
女子の特性として、「リスクをとることに慣れていない」「周囲の人を巻き込むことが苦手」「感性が優れている反面、感性に頼りがちでデータ等で説得するのが苦手」という点が紹介されました。また、「M字型就労曲線の転機となる28歳までに一人前になり、仕事と家庭のどちらもあきらめずにすむように、産み時などのライフイベントも視野に入れた女子教育を実践している」という、女子校ならではの教育は興味深いと感じました。
中高生世代には、組織を動かすなど、総合力が求められるプロジェクト活動をやらせることが大切であるということです。
学校教育の現場が閉鎖的で入り込むことができず、課外活動から実績を積み上げてきたが、「自分ができることは何か」からはじめるのではなく、「何をしたいのか」からスタートすることで、自分の世界が無限に広がる、という言葉が印象に残りました。
参加者同士の意見交換の時間も設けられ、反転教育などITを活用した教育やその評価方法、今後に期待すること等、様々な意見が出されました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。