ESG投資やダイバーシティの現状について、投資する側と投資される企業、双方の視点でセッションしていきます。会場は東京のスタジオから、ファシリテートは佐々木かをりです。
セッション2
トークショー
ESG投資の視点 ダイバーシティの可視化の重要性
ダイバーシティを可視化し、企業成長を! 投資家も注目する新たな指標
小林章浩Akihiro Kobayashi
小林製薬株式会社 代表取締役社長
八木洋介Yosuke Yagi
株式会社people first 代表取締役
「まずは投資する視点から。ESG投資は今どれくらい重要になっていますか?」という問いかけに、「SDGsの視点もESG投資も、さらに浸透してきました」と中川順子さん。「環境問題はよく取り上げられるようになり、どの企業に投資して社会を変えていくかという観点は広がっている。投資を支える立場からも非常に重要な切り口」と、実際の数値を示しながら大きな変化を語ります。しかし課題はあります。それが「企業の取り組みの可視化」です。
「環境については、Co2排出量などわかりやすいデータが開示されているが、女性活躍などについては新たな指標が必要」と言う中川さん。すると「日本の企業が、それを数値化して出したら大変なことになりますよ」と、八木洋介さんが苦笑いします。「日本のジェンダーギャップ指数は121位。ダイバーシティ世界最悪なんだから、一定レベルまでは数値目標を持って改善するのは当たり前。おっさんばかりの企業が勝てるわけがない」と、現状の課題を強く指摘します。
「ダイバーシティの可視化は重要です。でも、ただ女性の数を数えているだけではどうにもならない。そう考えてつくったのが『ダイバーシティインデックス』です」と、佐々木もうなずき、日本で初めて組織のダイバーシティ進度を数値化する仕組みを紹介します。参加企業の一つ、小林製薬の社長である小林章浩さんは、「びっくりするようなスコアが出ました」と、その感想を語ります。「『ダイバーシティの推進が企業価値の向上につながっていない』と答えた人が70%もいました。小林製薬には全社員アイデア提案制度があり、多様な立場の人の多様なアイデアで成長してきたことはみんな知っていましたが、それこそがダイバーシティなのだとは理解されていませんでした。私の説明不足を痛感し、さっそく全員にメッセージを送りました。ダイバーシティインデックスで、課題が明確になりましたね」
中川順子Junko Nakagawa
野村アセットマネジメント株式会社 CEO 兼代表取締役社長
佐々木 かをりKaori Sasaki
株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長
国際女性ビジネス会議 創設者・総合プロデューサー・
実行委員長
小林さん本人のスコアは「全従業員のなかで平均よりちょっと上」とのこと。八木さんは「この開示が素晴らしい!」と、社長もテストに参加してその結果まで開示する企業風土の大切さを述べ、「いずれにしても数値化は非常にパワフル。それを表に出していくことが第一歩。CEOがリードして、本気を示していただきたい」と参加者に呼びかけます。中川さんは「投資家からの要望で、女性活躍に熱心な企業がインデックスに含まれるようになっています。その他、世の中をよくするファンドをつくると、非常に反応がいい。投資家層は広がっている」と、今後に期待を寄せます。
ESG投資にもつながる、すべての基本がダイバーシティ。その可視化の重要性を体感できたディスカッションを、佐々木が「ダイバーシティは時代の流れの素敵なことではなく、企業の成長のため、社会が成長するための大切な基盤」と、力強く締めくくりました。