トークショージェンダー平等が大切な理由

  • 津田 大介
    津田 大介

    ジャーナリスト
    あいちトリエンナーレ2019芸術監督

  • 上野 千鶴子
    上野 千鶴子

    社会学者・東京大学名誉教授
    認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長

  • 治部 れんげ
    治部 れんげ

    ジャーナリスト
    昭和女子大学 現代ビジネス研究所研究員


格差解消は女性だけのためではない。公正な社会を実現するため。

ジェンダーギャップが埋まらない日本。この国の意識に潜んでいるものを掘り下げ、ジェンダー平等が必要な本来の意味を話し合うトークショーです。今もっとも注目を集める方々の登壇に、会場から盛大な拍手が起こります。

ファシリテーターのジャパンタイムズ執行役員・論説室論説委員 大門小百合さんが口火を切ります。
「me too運動、財務省のセクハラ問題、東京医科大学の不正入試などで、女性が不当に差別され、隠されていたことが表に出てきている今、私はこれをポジティブに捉えて話し合っていきたいと思います」

そして社会学者・東京大学名誉教授の上野千鶴子さんの東大入学式の祝辞について「衝撃的、かつ真理を突いたお話だった」と告げると、上野さんは「私は前から同じことをずっと言ってきたので、変わったのは私をあの場に立たせた東京大学ですね」と笑顔で語り、さまざまな反論、共感の声を紹介。また、「2020年までに女性リーダーを30%以上」という男女共同参画の目標については、「なんで202050じゃないねん!」とバッサリ。「まず、企業は応募者と採用者の性比差を公開してほしい」という根本的な課題に斬り込む言葉に、会場から大きな拍手が起こりました。

「202050をまさに実践している」と紹介されたのは、8月1日から始まる国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の芸術監督である、ジャーナリストの津田大介さん。参加アーティストの男女比を半数ずつにしたことについて「日本のジェンダーギャップ指数が大きいなかで、美術業界はどうなんだろうと国際芸術祭などを調査したら、男性が女性の3~4倍選ばれている。選ぶ側が男性なのでこういう状況。これを変えなければいけない」と、その目的を熱く語りました。

6月に開催されたG20に向け、女性に関する政策提言を行ったW20のメンバーであるジャーナリストの治部れんげさんは、家事育児介護などの無償ケア労働の男女格差解消などを盛り込んだ力強い前進を報告。そして「私はミクロの視点から」と、家庭内での気づきを語ります。
「小学1年の娘が、出席番号が男子から始まることに疑問を持っていた。差別は目の前にあると見えにくい。足元から見なければと思っているところです」

さらに、「正義だから、儲かるから、女性の数を増やす、という動きにはちょっと待てよと。私たちはやりたいことがあり、望ましい社会があったからじゃないのか。今日はそれを言いたくてここへ来たんです」という上野さんの言葉で議論が深まっていきます。治部さんも「ジェンダーの話というのは、決して女性だけの話ではない」。津田さんも「公正な社会の実現のため。男性も“男性らしさ”から逃れられる」とうなずき、会場から共感の拍手も起こります。

「今、みんなお茶汲みしなくていいのは誰のおかげや、って時々言いたくなるのよ」「男が嫌がることを、嫌がらせを受けながら言いつづけてきた女たちが、あなたたちの前にたくさんいたから、ここまで来たんだってこと、覚えといてください」。そして自分より若い人たちに手渡す社会のことを考えて欲しいと、上野さんが語ると会場では涙する姿が。

ジェンダー平等が実現する社会へ向けて「行動あるのみ。ここにいる一人ひとりのアクションが明日を変えていく」と大門さんが締めくくり、惜しまれつつも熱く高密度なトークショーが終了しました。