「野村證券という歴史ある日本の金融グループで、社内からぐいぐいと上がって社長になられた」と、佐々木かをりのご紹介とともに登壇した中川順子さん。
社長になって、今思うこと
スケールアップしたときの具体的なイメージを持とう!
「1988年に大学卒業、野村證券に就職。以来、野村グループの中にいました。それほど珍しい経歴ではないと思う」と控えめな前置きをしつつ、いくつかあったというターニングポイントに言及します。一般職から総合職への転換、3つの部署を経験して単身赴任生活が3年置きに3回繰り返された時代。2004年に一度退社し、2008年に再入社した際には野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー株式会社の社長に就任。その後野村ホールディングスでは執行役財務統括責任者、そして野村アセットマネジメント執行役専務を経て現在のポジションへ。
「新しい役割がやって来ると、その瞬間は重いとか怖いとか、自分にできるのかという考えが頭をかけめぐった。でも、かけめぐらせた後に必ず腹をくくった」と振り返ります。「強い自信があったわけではない。でもチャンスをもらえるだけでありがたいことだと思いました」。
ご自身の体験から中川さんが強調されたのは、違うポジションに行った瞬間に自分の環境が変わるということです。ポジションによって見える景色も見渡せる面積も変わり、また、チームや周囲のサポート力も変わるといいます。トップのポジションへと登り続けた方だからこその重みのある言葉に、深い頷きが会場に広がりました。
さらに、今回のテーマであるスケールアップにまつわる貴重なアドバイスを二つ。まず、スケールアップした立場でものを考えること。今より一つ上の立場で考えて提案すれば、あなたの上司が助かる。もう一つは、スケールアップしたときの具体的なイメージ、心の風景を持つこと。中川さんがずっとイメージしていたのは、学生時代にアルバイトをしたアジア開発銀行の会議で女性が活躍する風景だったといいます。
「躊躇して自分らしくやれないのはもったいない。チャンスが来たらしっかりつかんで恐れずに取り組んでほしい」と参加者を温かく鼓舞。そして最後は、「失敗しても俺が責任をとるから頑張れと、女性を応援してあげてほしい」と、男性上司の方たちへのメッセージを伝えてスピーチを締めくくりました。
内に秘めた強い意志、ストレートで穏やかな語り口調、聴く人の心にまっすぐ響く言葉の数々。そのしなやかな存在感が、多くの参加者を魅了する基調講演でした。