円卓会議104ティール組織と人財マネジメント

  • 有沢 正人
    有沢 正人

    カゴメ株式会社
    常務執行役員CHO(人事最高責任者)

  • 嘉村 賢州
    嘉村 賢州

    東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授
    特定非営利活動法人場とつながりラボhome's vi 代表理事
    「ティール組織(英治出版)」解説者

  • 白河 桃子
    白河 桃子

    相模女子大学 客員教授
    昭和女子大学 客員教授


生命体のような「ティール組織」が、企業のあり方を変えていく。

注目の「ティール組織」について、その第一人者や実践者とともに話し合う贅沢な円卓会議。会場の空気はすでに高揚し、壇上に視線が集まっています。「すごいですね! この熱気のままで行きたいと思います」と、ファシリテートを務める株式会社イー・ウーマン取締役の新納麻理佳が参加者へ呼びかけ、議論がスタート。

ティール組織という概念を日本にいち早く紹介、解説した書籍がベストセラーとなっている東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授の嘉村賢州さんは、「組織のあり方に5、6年前から問題意識があった」といいます。仕事を一年間休んで世界を旅する中で、「一人一人が自由に意思決定しつつ、信頼で結びつき、まるで生命体のような組織」という、常識を覆す組織の考え方に出会い、「これは未来を拓く」と感じたとのこと。人類が誕生して以来、組織は5段階を経て進んできたこと、そして「自主経営」「全体性」「存在目的」という3つのポイントでティール組織をわかりやすく解説します。

会場がくぎ付けになった嘉村さんの説明に「すごく贅沢なダイジェスト!」と、笑顔でうなずくジャーナリストの白河桃子さん。「働き方改革で取材していると、経営者が目指しているのはみんなが生き生きと働く組織。それを進めると、じゃあ評価と報酬の問題はどうするのか、組織はどうあるべきかという課題に必ず行き着く」と語ります。パタハラで炎上した企業の例を挙げ、「会社は驚いたでしょう。昭和の当たり前をやってきただけですから。しかし、『昭和の普通は、令和の炎上』。人財マネジメントがこれまでと同じでは、社員は離れていきます」と、旧来の組織のあり方に鋭く切り込みます。

書籍『ティール組織』を読んで「これや!」と思い、さらに自社の変革を積極的に推し進めたというカゴメ株式会社常務執行役員CHOの有沢 正人さん。「かなり好評ですよ。その実例をお話したい」と、情報の透明化や意思決定プロセスの権限譲渡、人事プロセスの明確化などを働き方改革とセットで取り組んだ過程を具体的に紹介します。「役員報酬の固定・変動の割合や業績とどう連動するのかを開示」「会議より日頃のカンバセーション」「社長も含めたフリーアドレス」など次々と語られるエピソードに、会場から驚きの声も。「矢継ぎ早にどんどん変えました。もともと自由な会社だが、さらに自由度が増しています」と笑顔を見せます。

後半は、会場から質問を募ってのディスカッションです。「情報の透明化について、コンプライアンスの問題はどうクリアしているのか」「ティール組織でうまくいっている評価システムは?」「自主性を大事にしながらクオリティを担保するには?」「経営者の意識が低い企業で取り組むには?」…スピード感の中で、議論がますます深まっていきました。

「戦略が組織を規定する時代は終わり、柔軟な組織体制が大切」と有沢さん。「人こそ企業の財産になっていく」と白河さん。「ティールは正解でも目指すべきものでもないが、もし歪みがあるならティールから学べると思っていただきたい」と嘉村さん。「ティール組織はまだまだ探求をする旅の過程。人と組織の関係、そもそも組織とはなにか、その問いが次のフェーズに移っていく」と新納がまとめ、続きは9月に「表参道カレッジ」で開催と発表され、熱い空気の中で議論が終わりました。

イー・ウーマンピアからのレポート

午後のプログラムはテーマごとに分かれて行われる円卓会議。どれも気になるテーマですが、体は一つ。ものすごく悩んだ末に、話題の「ティール組織」の円卓会議を選びました。
国際女性ビジネス会議では常連となっていらっしゃるカゴメの有沢正人常務に加え、以前からお話を聞いてみたいと思っていた白河桃子さん、そしてティール組織の研究者でいらっしゃる嘉村賢州先生のお話は聞き応え抜群でした。
まず最初に嘉村先生から、「皆さんの属する組織はどのタイプですか」とのご質問。私は家族型(ティールの一つ手前)でした。すでにティール型だという方も意外に多くて驚きました。
ティール組織は、従来のピラミッド型ではない組織。だからこそ、どこに意思決定があるのか、責任はだれが負うのか、すべてが自己責任なのか、など疑問があります。質疑応答ではそういった疑問が活発に出てきました。
「会議でみんなが均等に発言できる風土づくりをすること」「上司が自分の弱みをさらけ出せること」「各自が失敗をオープンにして共有すること」それが、安心で安全な組織づくりになるとアドバイスをいただきました。
女性が多数の中、男性の参加者もけっこう目にとまりました。

いのくち