ダイバーシティ経営の成果
成果が見え始めている今、課題は「スピードアップ」。
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ダイバーシティが経営にとって重要であることは、さまざまな分野で十分に議論されています。では実際に、その成果は表れているのか、ビジネスリーダーによる率直な意見交換のスタートです。ファシリテートを務めるのは、4月から世界経済フォーラム 日本代表を務めている江田麻季子さん。最初の質問は、「今、実感が出ている成果とは?」
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デロイト トーマツ グループCEOの永田高士さんは、そもそも公認会計士の資格を取る女性の割合が男性に比べて低いという背景があるなかで、「理想としてはトーマツグループでの男女の比率は当然50%を目指しています。パーセンテージは増えているが、デロイトのグローバルスタンダートからすると半分程度、まだ低い。そのためには経営者自身が変わらなくてはいけない」と語ります。
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「ミスターダイバーシティ」の異名をとる元カルビー会長、現RIZAPグループCOOの松本晃さんは、「ダイバーシティは既得権を奪いますから、それは力づくでやらなければいけない」と、今年も力強く主張。そのためには業績アップという数字を示すしかないとし、「私のダイバーシティジャーニーは2001年に始まりました」とジョンソン・エンド・ジョンソンやカルビーでなし遂げた業績について具体的な数字をあげて紹介しました。
オーストラリアのワークプレイス男女平等局のディレクターであるリビー・ライオンズさんは、この会議のために来日してくださいました。「ゴールドマンサックスの調査によると、オーストラリアでは女性の労働市場への参加が6%上がることによってGDPが11%上がるということがわかっています」というリビーさんの言葉に、江田さんは「こういった数字はぜひ覚えておきたいですね」と笑顔で答えます。そして、オーストラリアで雇用者側が男女平等に関するデータを集めて男女平等局に提示することで自社の女性の占める割合や賃金、ワークスタイルの柔軟性などを客観視できるシステムが確立された今、「各企業が競いあって、よりよい成果が出ています」といいます。
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そして話題は、近年のトレンドやダイバーシティのスピードについて。松本さんが「日本を代表するトップは、この暑い日にゴルフなどをしているのではないか。ここに来たほうがよっぽど勉強になると私は思うんですけどね」と言うと、会場は思わず笑い声に包まれました。
永田さんは「デロイトでは強力にダイバーシティを推進し、2020年には誰もが認めるダイバーシティ&インクルージョンの先進企業に」と、スピードアップを強調します。リビーさんは「制度」で解決していくことも必要とコメント。「去年も遅いといっていた松本さんがまだ遅いと言っている今、来年は『変化が早くなった』といえる環境がつくれればと思います」と江田さんが前向きに締めくくり、来年への期待をこめての終了となりました。