講演マダム、これが俺たちのメトロだ!

  • 本田 桂子
    阿部 玲子

    株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル インド現地法人 取締役社長


4万人働く現場で、女性エンジニアは私一人、だから、働き続ける。

本田 桂子写真

「去年の秋、インドで阿部さんと出会い、講演をご一緒し、魅了されました。彼女の英語の講演は、まるで大阪弁の落語を英語で聞いているみたいで、パワフルで面白く、どうしても私たちの会議に登壇して頂きたいとお願いして、今回わざわざインドからお越しいただきました」と、佐々木かをりのご紹介とともに登壇した阿部玲子さん。

「マダム、これが俺たちのメトロだ!」という講演タイトルについての説明からスピーチがスタート。エンジニアとしてインドの地下鉄工事の仕事をしている阿部さん、休日に乗ったオート力車の運転手が、私が作った地下鉄を指差し「マダム、This is our metro!」と自慢げに言ったのを聞いて、「エンジニアとして本当に嬉しかったです、だから今回このタイトルにしました」。「でも実はこの話にはオチがあって、その次に彼は『マダムの国にはメトロがあるのか?』と言いました」と話すと、会場からはどっと笑いが湧き起こります。

「日本の女性土木エンジニアのパイオニア」を自負する阿部さんは、大学卒業後、建設会社に入り、トンネル工学を活かして現場で働きたかったが、「山には女の神様がいる。そこに女性のエンジニアが入ると神様が嫉妬して山が崩れる」と言われ、エンジニアでありながらトンネルに入れなかったといいます。デスクワークをしながら、どうすれば現場に出られるかと考えた末、男女平等のノルウェーに留学。以後、様々な国で仕事をし、2007年からインドの地下鉄プロジェクトに従事されています。

地下鉄プロジェクトのトップとしてインド初の女性プロジェクトマネージャーに就任したとき、ある人が「女性に出来る仕事ではない」と難色を示したところ、一緒に仕事をしていたインド人男性が「彼女ならできる」と断言。「援護するつもりで、She looks like a womanと言ってくれたんです。私はリアルにウーマンなんですけど」(笑)と、女性エンジニアになるまでの道のり、なってからも続くご苦労を、笑い飛ばすように語ります。

本田 桂子写真

さらに、インドの地下鉄のプロジェクトマネジメントとはどんな仕事か、発展途上国の安全対策について話され、畳掛けるように刺激的なエピードが続々。阿部さんは終始楽しげに軽妙な語り口調です。

最後に、「インドのメトロが4万人を雇用する中、女性で現場に出ているエンジニアは私一人です。女性の活用とかそういう問題以前に、一人しか居ない。だから、looks like womanと言われながら働き続けています」と、力強く締めくくりました

途中涙を拭う姿も見られたほど、笑いに包まれたパワフルな講演でした。