円卓会議203企業戦略。ダイバーシティ組織は本当に強いのか?

  • 有沢 正人
    有沢 正人

    カゴメ株式会社
    常務執行役員CHO(人事最高責任者)

  • 髙倉 千春
    髙倉 千春

    味の素株式会社 理事 グローバル人事部長

  • 武田 洋子
    武田 洋子

    株式会社 三菱総合研究所
    政策・経済研究センター長 チーフエコノミスト

  • 佐々木 かをり(F)
    佐々木 かをり(F)

    株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
    株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長
    小林製薬株式会社 取締役
    日本郵便株式会社 取締役
    株式会社エージーピー 取締役


グローバルにもAIにも適応していく。
ダイバーシティが企業のしなやかさと強さをつくる!

声で変わる。ボイスワークショップ 写真

ダイバーシティを企業戦略とすることの重要性は何か、その過程で企業がどんな挑戦や取り組みをしているのか。この円卓会議では、日本企業の先進的な事例を紹介いただきながら、ダイバーシティ経営の強さを探ります。

カゴメ株式会社で「人事制度を6年前にガラッと変えた、組織と仕組みから変えて来た」と言う有沢 正人さんは、「ダイバーシティ推進室がある内はダイバーシティが進んでいない証拠。組織の中にビルトインされて、理念として経営戦略の中で一番大事と位置づけられたときこそ、進んだと言える」と断言。さらに、「カゴメでは、今まで男性が優遇されてきたと思う。したがってこれから女性管理職を増やすためには女性は潜在力、男性は成果で評価していくくらいのつもりである。女性にゲタを履かせて何が悪い!」と。

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25年間外資系企業を中心に勤務し、2014年に味の素株式会社に入社した時、「自分の経験を活かし、なんとか真のグローバル化に貢献したいと強く感じました。」と、髙倉 千春さん。「奥歯が割れる」ほどのプレッシャーの中、ポジションマネジメントという考え方を社長に理解してもらい、副社長に毎日説明に行ったと、当時を振り返ります。そして、過去の実績は評価しつつ、これからどうするかという議論に持っていくために、幹部一人ひとりに話し、自分がやっている事を応援してくれるファンを増やした。「ファンクラブをつくる感覚」だったと言います。

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エコノミストの武田 洋子さんは経済をみる立場から、政府の女性活躍政策もあって2017年には女性就業率が過去最高の67.4%となった事、一方でジェンダーギャップでは日本は114位であることを示し、「数だけでなく質でどう活かされているのが問われている」と指摘。また、シカゴ大学の山口先生によると、「女性の管理職の割合が増えるほど利益率、生産性が高いという結果もあらわれている」。

さらに、「人事が主導する時代は終わった。これからは経営が、マーケティングが、ダイバーシティを主導する時代」と言う有沢さんは、女性が消費者目線で商品開発した「スムージー」の例を紹介。

髙倉さんもそれを受けて「イー・ウーマンと一緒に作ったトスサラという商品」に触れながら、「企業がグローバルに展開する際、スピードを持って現地の文化に準拠しなければならないので、ローカルの優秀な現地の人を登用しないと負けてしまう」と、女性のみならず、もう一つのダイバーシティの重要性に言及。

佐々木は、この秋にスタートする「ダイバーシティ・インデックス」に触れ、ダイバーシティはイノベーションを生むもの。その進度を知ることはとても重要。ダイバーシティインデックスで数値化するのは女性の人数や割合ではなく、社員一人ひとりの知識や認識であること。また、ジェンダー以外に国籍や障害なども重要であることを伝えました。

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スピーディに展開するディスカッションを一言も聞き漏らすまいと、会場のみなさんも終始集中して耳を傾けています。
後半の質疑応答では、組織開発の支援をしている方から「中小企業の経営者にどんなアプローチをしたらわかってもらえるか」、人事担当の方から「女性のマネジメント比率が高まってきたとき、産休育休の人事運用はどう運用すればいいか」、男性の方から「スキルや経験が劣っている人の場合にも、登用するのが強さにつながるか」など、それぞれの課題や疑問をシェアし、スピーカーの方々も全力で答えてくださいました。

最後はスピーカーから一言コメントを。「ダイバーシティに反対する男性管理職を説得するには、どんな良いことがあるかを見せること。それが経営の使命」と有沢さん。「本当の意味で実力主義、“適所適材”を実行すれば自ずとダイバーシティが実現でき、グローバルな日本企業になれる。抵抗勢力に対してはLIVE STRONG!」と髙倉さん。武田さんは「変化の多い時代は適応力の高い企業ほど生き残れる。ダイバーシティがしなやかさと強さをつくる」。佐々木は「この会場の一人一人が、専門性を高め、プラスをつくること。それをいつもどこでも実践いただき、ダイバーシティな日本に、世界になるようにがんばりましょう」と、力を込めて呼びかけました。

ディスカッションの余韻を味わう間もなくネットワーキングパーティへと急ぐみなさんの表情は、ひときわ明るく、力強く、輝いています。

イー・ウーマンピアからのレポート

「”ダイバーシティ”思想そのものの多様性へ」


パネラーは“ザ・日本”とも呼べる企業にお勤めの方々。
個人的に思うキーワードは「環境適応」。
今までは日本の国内市場でのマーケティングで事業が成り立っていた。
でも、企業規模が大きくなると、海外市場にも目を向けないと企業の成長はありません。
規模だけではなく、企業体質も変化に対応しないと存続すら危うくなります。
「ダイバーシティ=多様性」は、 ”変化の選択肢を多くする方法の一つ”と思います。

会議、及び、セッションでは”女性の活躍分野を広げる”のがメインの趣旨とする傾向が多かったと思いますが、これからはそれ以上の多様性が要求されていると思います。
「ダイバーシティ」が多様性を謳うならば、下記の課題を来年の会議で取り上げて欲しいところです。
・女性職場への男性の展開。
・LGBTの人々の活躍場面の拡大。
・非経営層での実践例。
・失敗から学ぶ「多様性の展開」へのフィードバック。

Kylin

参加者は400名くらい、大きな部屋がほぼ満席でした。開始前から多くの方が着席し、熱気が伝わってきました。
議論ではパネリストの方がそれぞれ、ご自身の会社の事例を熱く、詳細に語って下さり大変白熱しました。
質疑応答では人事関連業務を担当されている方から多くの質問があり、具体的な内容が多かったです。
パネリストの方が自社の事例などを交えつつ応じられていました。
私は人事担当ではないのですが、ずっと前から会社の役員クラスの方に聞いてみたいと思っていた質問をし、
それに答えを頂けて非常にうれしかったです。
質疑の中にでてきた抵抗勢力への対応方法は自分の仕事にも活用させていただきます。

本の虫

重要な企業戦略「ダイバーシティ」


企業戦略。ダイバーシティ組織は本当に強いのか?答えはYesでした。
国際女性ビジネス会議において、過去に「人事」についての講師を務めてられたカゴメ社・有沢氏のファンが多かったようで、会場には非常に多くの人事課の方が来られており、数多くの質問が飛び交いました。

その有沢氏からは「組織と経営のダイバーシティを二つ同時に行わないと進まない」、「アプローチは必ずトップに!変えるときは大胆に!時間はかかるが共犯にすること」というご指導をいただきました。三菱総合研究所のチーフエコノミスト・武田さんからは「ダイバーシティで日本経済は良くなると見ている」というお話を聴かせていただき、「東京大学の川口先生によれば、女性の就業率が上がっている中、もし女性の生産性が低いのであれば、企業の利益は下がるはずだが、利益率は上がっている」という嬉しい事実を教えていただきました。佐々木かをり社長も「組織というのをダイバーシティにすると、いろいろな数値が良くなる」、味の素社・高倉さんも「ダイバーシティにしないと世界でやっていけない」とおっしゃってられます。

さらにAIについてのお話も聴かせていただけたことが印象的でした。武田さんは「過去と比べて今は、猛スピードで技術が進展し、人間のタスクが変わっていくので、企業のポートフォリオを定期的に変えていかないといけない」、高倉さんも「人財のポートフォリオを5年、10年など区切って、次世代に必要な人を考えること」とご解説くださり、佐々木かをり社長からは「これからはAIができないことができる人財が求められる」とご指導していただきました。武田さんの「今、与えられたこと、やるべきことをやっていくことで、変化に対応できる」というお言葉や佐々木社長の「どのお仕事でも応援してくれるファンを増やしていくことが大切ですね」というお言葉も印象に残っております。
この会議においても成功する秘訣や具体的な成功事例を数多く聴かせていただき、また力強いメッセージばかりで深い感銘を受けました。また講師陣の先生方が生き生きと心から楽しんでお仕事をされていることが伝わり、とても元気になれました。

余談になりますが、ネットワーキングパーティーの際に、佐々木社長とお名刺交換ができ、お写真も撮影していただけるスペースで、有沢氏と佐々木社長がハグされている場面も見られました。会場にいらっしゃる方々が、プラスのエネルギーで満たされて、どんどんつながっていくというように感じられました。

マカロン71