全体リポート

国際女性ビジネス会議、第23回目のテーマはLIVE STRONG。
ダイバーシティを体感する、日本最大級のこの会議は、大会場での4時間の会議と、
午後に、5テーマに分かれて議論する円卓会議が2セッション。
そして夜のネットワーキングパーティと毎年10時間に及びます。

待ちに待ったこの日。グランドニッコー東京 台場の会場前には、「誰よりも早く入場したい」「前の方に座りたい」という参加者がド8時前から行列をつくり、互いに名刺を交換し、楽しそうに話しながら待っています。たくさんの方の来場で、9時の予定を15分早めてドアオープン。今年導入した最新の「顔認証」システムによりスムーズに受付が進んで行きます。

メイン会場に入るとそれぞれ好きなテーブルへ着席。すぐに名刺交換や自己紹介がはじまり、SNSに写真をアップする姿も見られます。スーツやワンピース姿に混じって、着物の女性や制服の女子中学・高校生、民族衣装、ヒジャブを身につけた方々、また会場後方には大勢のプレスの方もスタンバイ。800人、男性1割、14歳から80代までの参加者が会場を埋め尽くした10時、いよいよ第23回国際女性ビジネス会議の開幕です。

フロアの照明が落ちてステージに熱い視線が注がれる中、この会議の実行委員長である佐々木かをりが壇上へ。
まず、世界の女性経営者組織「WPO」日本支部設立と、上場企業の社外取締役とその候補の女性200人のクラブ「THE BOARD」設立、そして、昨年の国際女性ビジネス会議で公表した日本で初めて職場のダイバーシティ進度を数値化するためのテスト「ダイバーシティ・インデックス」が今秋11月に開始という、3つの発表を行いました。
続いて、今年の会議テーマ「LIVE STRONG」に込めた想いを語り、STRONGを再定義。「もう、相手と戦うことを強さと呼ぶ時代は終わりました。自分が強いから、多様な意見に耳を傾けられ、より良いアイデアをつくれる。時代や状況の変化を察知してフレキシブルに、しなやかに対応できる。新しいものに挑戦できる。人生100年時代の中で健康に元気に歩んで行ける。ダイバーシティ時代の強さとはそういうことです」。
「これ以上出せないぐらいのプラスのエネルギーを出して、ともに10時間を過ごして行きましょう!」と高らかに呼びかけ、いよいよ熱い一日のはじまりです。

全体会議写真 全体会議写真

総勢48名のスピーカーの先陣を切って登壇したのは、野田聖子大臣。「STRONGとは自分を信じることではないか」と自らを振り返り、この国を立て直す一丁目一番地として女性活躍を進める中で「担当大臣として“フェアネス”ということに重きを置いてきた」と言います。「私達を幸せにし、子どもに安心安全を残すために、ここに居るみなさんが一つになれたらと思う」と締めくくり、会場から力強い拍手がおくられました。

続いて、日本マクドナルド株式会社社長のサラ・L・カサノバさんが白のパンツスーツで颯爽と登場。日本でダイバーシティがあまり進歩していない理由の一つを「自信の無さ」であると指摘。「前に進む自信を持つ方程式をみなさんに伝えたい」と言い、ご自身の体験に基づく「秘伝のソース」を3つ伝授されました。「訪れたチャンスすべてにYESと言おう、まだまだ私達にはポテンシャルがある」。激励のメッセージに、多くの女性達が目を輝かせて頷きます。

3人目のスピーカーは、19歳でエベレスト登頂に日本人最年少で成功し、昨年は北極点に到達、「エクスプローラーズ・グランドスラム」を世界最年少で達成した、現在21歳の南谷真鈴さんです。「3つの見えない山に立ち向かった」と、華々しい成功を収めるまでの険しい道のりを語り、「最終的には自分を信じること、自分のサポーターになって心のコンパスの向く方向に行けば次々に夢が実現する」と。

そして4人目は、株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル インド現地法人社長の阿部玲子さん。女性エンジニアになるまでのご苦労から、インドで地下鉄、新幹線の工事をマネージする女性リーダーとして、「まさか女性とは」と驚かれたり、「looks like woman」と言われたり、クレーンが倒れても「ノープロブレム」と言ったエピソードなど、過酷であろう環境を語るときにも必ずジョークをはさみ、会場は笑いの渦に包まれました。

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ここからは、3つのトークショーが続きます。最初は、先月RIZAPグループ株式会社COOに就任されて話題の松本晃さん、オーストラリア ワークプレイス男女平等局ディレクターのリビー・ライオンズさん、デロイト トーマツ グループCEOの永田高士さん、世界経済フォーラム日本代表の江田麻季子さんが登壇。ダイバーシティ経営の「成果」を出すことがいかに重要か、ダイバーシティを加速させるには制度と環境が必要であるなどを強調されました。

次に登壇されたのは、3人の駐日女性大使。バングラデシュ人民共和国
特命全権大使のラバブ・ファティマ閣下、スロヴェニア共和国
特命全権大使のシモナ・レスコヴァル閣下、ザンビア共和国
特命全権大使のンディオイ・ムリワナ・ムティティ閣下。そしてジャパンタイムズ 執行役員の大門小百合さん。女性の大使として苦労されたこと、達成されたこと、日本のジェンダーの課題などにも触れ、「私達は強い。その強さを引き出し、他の女性をサポートしましょう」と女性達にメッセージ。

午前中最後のセッションは、ビジネス界のパワフルな女性リーダー達のトークショー。着物姿が麗しい、BTジャパン株式会社代表取締役社長の吉田晴乃さん、GEジャパン株式会社社長の浅井英里子さん、昨日30時間のフライトでアルゼンチンから到着されたスサーナ・バルボ・ワインズ創業者のスサーナ・バルボさん、NHKワールド英語ニュースキャスターの高雄美紀さん。それぞれが女性リーダーとしてどのように強く生きて来られたか、飾らず、歯に衣着せず、貴重な体験を語ってくださいました。

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一言も聞き逃すまいと集中してお話を聴くうち、あっという間にランチタイムとなりました。毎年この会議のためにホテルが特別に用意するヘルシーなコースランチをいただきながら、会話も弾みます。

ここで登場されたのが都知事の小池百合子さん。国際女性ビジネス会議、3度目のご登壇です。東京都の待機児童対策、女性管理職が4割などに触れ、「東京を元気にするのは女性、女性を活かすことが経営戦略。素晴らしい女性にチャンスを!」と力を込めて語り、鳴り響く拍手の中を急ぎ足で退場されました。

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次なるトークショーは、メットライフ生命保険株式会社最高経営責任者のサシン・N・シャーさんとNHKワールド英語ニュースキャスターの高雄美紀さん。「移民としての体験が私を強くした」というサシンさんは、人生100年時代に必要な強さは精神面、健康、財務力であると指摘し、「高齢化を肯定的にとらえ、老後を変えましょう」と提案。

そして今日最後のトークショーは、「年齢なんて関係ない!」がテーマ。iPhoneアプリの開発で昨年にわかに有名人となった83歳の若宮正子さんは、ベーシック言語がプリントされたTシャツに「3Dプリンターで自分でつくった」というペンダントを着けた姿から、すでに個性的。女子高生プログラマーの西林咲音さんは、「女子高生だから、ではなく、やって来たことを正当に評価してほしい」と訴え、脳科学者の茂木健一郎さんは、「日本のジェンダーは何周も遅れている」などと熱弁。人類最初のプログラマーは女性だった事を紹介し、年齢もジェンダーも関係ないことを示唆しました。

ここで4時間にわたる濃密な全体会議が終了、この後、参加者全員でインタラクティブな議論を行う「円卓会議」へとプログラムは進みます。

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女性取締役管理職、副業&起業、健康経営、ダイバーシティ組織、フィンテック…。
テーマを選んで議論に参加する、円卓会議。

午後の円卓会議がスタートする前のショートブレイクには、ホワイエに設けられたパートナー企業のブースに立ち寄って話を聞いたり、サンプルや書籍を手に取ったり、また本日発売された手帳「アクションプランナー2019」を早速購入したりと、アクティブに楽しむ参加者のみなさん。登壇者と、参加者同士で、和やかに談笑する姿も見られます。

15時定刻に円卓会議がスタート。第1セッション、第2セッション、それぞれ5テーマ、合計10テーマのラウンドテーブルが設けられ、関心のあるテーマを選んで参加します。
第1セッションは、「Inclusive Leadership」、「Is Japan strong?」、「元気に働く!健康経営の事例と成果」、「新しい働き方:副業&起業という選択」、「女性取締役から見る今の起業経営」。第2セッションは、「A Vision : 2020 and Beyond」、「Multinational Management: Working abroad. Working with other cultures.」、「企業戦略。ダイバーシティ組織は本当に強いのか?」、「Fintechな生活」、「やっぱり管理職を目指そう!」。

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講師は、全体会議のスピーカーの方々に加えて、ザ・ペニンシュラ東京総支配人のソーニャ・ボドゥセックさん、外務省総合外交政策局女性参画推進室長の北郷恭子さん、早稲田大学ビジネススクール教授の川本裕子さん、UNODC グローバル事業局長の加藤美和さん、カゴメ株式会社CHOの有沢正人さん、日本総合研究所理事長の翁百合さんなど、各界の第一線で活躍する基調講演クラスの方々。豊かな経験と実績に基づく専門分野での知見や、最新の事例、今後への展望なども直接聴いてディスカッションできる貴重なチャンスです。

どの円卓会議も、後半のインタラクティブなディスカッションタイムに入ると、一斉に多くの手が挙がります。これも国際女性ビジネス会議の特徴の一つ。中・高生も新人社会人も管理職もトップも、年齢も性別も肩書きも国籍も多様な参加者が、積極的に質問や意見を述べ、登壇者も真摯に答え、互いに良い刺激を与え合うフラットな場となります。

さまざまな色のプラスのエネルギーが交差する円卓会議。終了後、参加者は口々に「普段は聞けない貴重な話で見方が変わった」、「私も同じような苦労を体験した」、「登壇者の言葉に背中を押された」、「今聞いたことを明日から実行したい」など、感想を述べ合っていました。

そして、18時からは待ちに待ったネットワーキングパーティです。

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多くの人が涙したスペシャルライブ、出会い讃え合うネットワーキングパーティ、
そして明日からの一歩を約束

今日最後のプログラムは、華やかなネットワーキングパーティ。メイン会場に再び集まったみなさんは、高揚した様子で賑やかに談笑しています。そんな中、佐々木かをりのご紹介とともにステージのキーボードの前に座ったのは、わたなべちひろさん。中学2年生のミュージシャンです。彼女が弾き語る「IMAGINE」がはじまると、しんとした静寂が広がり、優しいピアノと意思をもった声が響き渡ります。2曲目のオリジナル曲では、その美しく切ないメロディと力強く歌い上げるちひろさんの姿に、涙をぬぐう人があちこちに…。万雷の拍手が湧き起こり、「ブラボー」の歓声もあがり、パーティは感動のスタートとなりました。

まず、W20アルゼンチン議長のスザーナ・バルボさん、オーストラリア ワークプレイス男女平等局、ディレクターのリビー・ライオンズさん、株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル インド現地法人社長の阿部玲子さんが壇上へ。「私も相当泣きました。でも最後は必ず笑える。みなさんも笑ってください!」と阿部さんの乾杯の一言で、800人が力強く乾杯し、和やかな歓談タイムに突入します。

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次に壇上に招かれたのは、この会議をサポート頂いている企業「ゴールドパートナー」からお三方、小林製薬株式会社 グループ統括本社人事部部長の富山有子さん、三菱商事株式会社 女性活躍・ダイバーシティ室長の中西佐和子さん、メットライフ生命株式会社 執行役常務チーフマーケティングオフィサーの鈴木祥子さん。「たくさんのヒントを頂いた」、「今日得たことを、仲間たちと一緒にダイバーシティを推進するために、明日から強くしなやかに行きたい」、「素晴らしいインスパイアリングな一日に感謝」など、温かいメッセージをいただきました。

続いて、マッチングスポンサーとスポンシーの皆さん9組がステージに並びます。支援を受けて参加すべく、エッセイを書いて応募し、選ばれた高校生・大学生と、彼ら彼女らを支援して参加されたスポンサーのみなさんです。「将来はグローバルにニュースを発信する仕事をしたい。そんな夢を持っている私を周囲は良く思ってくれない。が、今日ここに来て、話を聴き、話をし、自分の想いは間違っていなかったと確信した。将来はスポンサーになる」と、高校生。男子大学生は、「性別は関係なく、個人として輝いている人を目の当たりに出来たことが一番」。スポンサーからは、「一緒に幸せを頂きました」、「毎年スポンサーとして参加するために資産を増やす!」とも。

ワインとトークに盛り上がる参加者。「何かを始めようとすると必ず抵抗勢力はある。でも、女性ならではの柔軟な思考と、失うものがない強さがあれば成し遂げることが出来るんだと、今日は勇気づけられました」、「結局は自分なんだと思いました、明日からSTRONGになります!」、「進路で迷っていたけれど、自分はこれでいいんだと思えました」など、心を開いた感想も耳にしました。

最後は、佐々木かをりから閉会のご挨拶。「来年は、男性と、10歳、20歳年下の人を誘って来てください。LIVE STRONGで前進して、2019年7月7日にまた会いましょう!」
名残を惜しみつつ、来年の再会を約束して、パーティは盛会のうちにお開きとなりました。

ひとりひとりのプラスのエネルギーが交差したダイバーシティカンファレンス、第23回国際女性ビジネス会議。ここで得た多くの示唆と感動を胸に、参加者のみなさんは、明日から、しなやかでインクルーシブな強さへと一歩前進することでしょう。

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