「人工知能の今」
初めに映し出されたのは、今や大人気のヒューマノイドロボット「Pepper」からのビデオメッセージ!
「ダイバーシティの実現は、女性活躍だけでなく僕たちロボットの活躍もありますよね。会場のみんなで、これからも一緒に歴史を動かしていきましょう」かわいらしいゲストの言葉に、皆さんの表情がほころびます。「この分野でトップを走る3人に一番ホットな部分をお話しいただきましょう」と、ファシリテーターの小宮悦子さん。ワクワクするような音楽と映像により、人工知能の最先端が次々と紹介されていきます。
ロボット開発のベンチャー企業、フラワー・ロボティクス(株)社長の松井龍哉さんからは、社会貢献事業として進めている自律型ロボットのサッカー大会「ロボカップ」と、自社で開発している家庭用ロボット「パタン」を紹介。「人工知能というと誇大妄想的なものを思い描かれがちですが、僕は普通の家庭の中でどうやってささやかに人間の生活を支えていくかというところに興味があります」と、その発想の原点を語ります。
「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのリーダー、新井紀子さんは犬と猫の写真とともに「皆さん、どちらが犬かわかりますか?」と問いかけます。思わず笑い声が起こった会場に向けて「実は、これがうちの子(ロボット)には難しいタスクなんです」。そして「耳の形、目の色、毛並。どれも決定的ではない。私たちはどこで見分けているのでしょう。それがわからないとロボットに教えられないんです」と続けます。人間が持つ複雑な感覚に改めて気づかされるプレゼンテーションです。
新井さんの話題を受けて「我々の知性とは非常に深いもの」とうなずいたのは、MITメディアラボ副所長の石井裕さん。ミラノサローネで発表した作品「TRANSFORM」を紹介します。それは人工知能が埋め込まれた、手をかざすと波のように動くテーブル。既成概念を覆す映像に、皆さんの目が釘付けに。石井さんは「まったく違う思想のぶつかりあいから当たり前の価値観を破壊し、新しい規範を作る」という人間の知性と、人工知能が生み出す可能性を「究極の知性」と表現します。
さらに話題は人工知能に代替される職業など、身近で始まっている影響について。「人工知能が人間を超えることは未来永劫ない」「機械が奪うとかを超えた次元で議論すべき。人間の知性が何を担うべきなのかを問うているのが人工知能の挑戦」と、議論が白熱しました。
「当たり前に感じている地球の動く様に耳を傾け、どのようにそこへ協調性を持っていけるか。それが、人工知能というよりは人間がもっていなきゃいけない進化の心得」と松井さん。小宮さんの柔らかなファシリテートで、人工知能という言葉が持つ様々な側面について深く語り合った充実のセッションに、会場から割れんばかりの拍手が鳴り響きました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。