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「まずは第20回、おめでとうございます。20年って、長いよねー!」
まるで友達同士のように親しげな挨拶。底抜けに明るい吉田晴乃さんの呼びかけに、会場の皆さんもつられて大笑い。ステージとの距離があっという間に縮まりました。
「私も今年、ワーキングマザー歴20年です。シングルマザーで海外に渡るなんてとんでもないことをやっちまったものですから(笑)、この20年はバトルでした」
パワフルかつ歯切れのよい口調で続ける吉田さん。1990年代にカナダで通信会社に勤務して以来、情報通信分野の最先端で活躍し続け、2012年よりBTジャパンの代表取締役社長に。2015年6月には女性初となる経団連副議長に就任しました。
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「経団連の榊原会長に、『新しい風になってください』と言われたとき、『風』ってなんだろうと。これがjob descriptionですか? 風のKPI(key performance indicator)ってありますか? なんてことは聞けなくて、悶々としていました」そんなとき、榊原会長が「従来にない発想や視点、新機軸で経団連の可能性を引き出してほしい」と語るのを聞き、自身の役割に気づいたと言います。
「私はこれを“バジル効果”と呼んでいます。ミシュラン三ツ星、和食の老舗のシェフが榊原会長。彼がバジルを手にした。何を血迷ったことを、などと言う必要もない。バジルはバジルらしく、100%フレッシュに効果を発揮すればいい。それが女性の社会進出。我々が我々であり続けることなんです」
その後、国内外の心強い女性たちから「勇気の火種」を受け取ったという吉田さん。そして、「ここに皆さんにどうしてもシェアしたい」と紹介してくださった写真があります。それは1885年、世界で唯一女性に医師免許を出していたペンシルバニアの大学で学んでいた、日本、インド、シリアの女性たち。勇敢な女性を輩出したこれらの国ですが、現在のジェンダーギャップ指数は残念ながら日本104位、インド114位、シリア139位。
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「だからといって何も起こらなかったわけではない。一世紀を超えて、日本は機が熟したと思います。我々がこの時代でやらなきゃいけないことがある。そして私たちの火種も次の世代へ受け継がれ、勇気となっていく。これがMake Historyということだと思います」
最後に、吉田さんは自身の20年後について「できなかった公園デビューを果たします!」と笑顔で宣言。 「孫のバギーカーを押して幸せそうなおばあちゃんがいたら、その人がピンヒールを履いていたら、私です。ぜひ声をかけてください」 貴重な体験のシェア、コミットメント。太陽のような明るさで会場の空気をひとつにしてくれた吉田さんに、惜しみない拍手が送られました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。