「キャリアと出産、更年期」
医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス 理事長
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長
NPO法人 女性医療ネットワーク 理事長
産婦人科医師・医学博士
株式会社バースセンス研究所 代表取締役
公益社団法人誕生学協会 創設者
一般財団法人ベビー&
バースフレンドリー財団(BBFF) 代表理事
仕事をしていく過程での出産、そして管理職や役員などのリーダーとなる時期の更年期。女性にとって重要なテーマであるキャリアとカラダの関係について、医師や研究者など各分野の専門家とともに学びます。
人気があったこのテーマは、あっという間にほぼ満席に。参加者には男性の姿もあり、女性とキャリアとの関係を考える上で職場の理解も欠かせない現状が映し出されている会場です。
産婦人科の対馬ルリ子さんは豊富な図とグラフで「仕事もし、赤ちゃんを抱えながら波に乗っているのが女性」と解説。「波」とは女性ホルモンの増減のことで、「男性ホルモンは1種類がコンスタントに出ている。女性ホルモンは2種類が排卵を境に大きなうねりで増減し、その影響を受けています」と、心身の変化をわかりやすく説明してくださいました。
「黒一点、女性の味方」と紹介された内山成人さんは、大塚製薬(株)の研究員です。「働く女性はパフォーマンスを重視する。そんな皆さんに貢献できるものを、ということで研究しています」という言葉に、会場から熱い拍手が送られます。そして女性ホルモンと似た作用を持つとされる大豆イソフラボンが必ずしもすべての女性に効果があるわけでないこと、その理由、エクオールの研究についてデータとともに詳しく解説いただきました。
若い世代に妊娠出産を学ぶ機会を提供する(株)バースセンス研究所代表の大葉ナナコさんは、日本の女性の初産年齢が世界一高齢となっていることに警鐘を鳴らします。「いろいろなスタンスの方が、『良かった』と思えるタイミングで妊娠を迎えられるためには、制度だけでなく、“風土”も必要。パートナー、職場のチームも一緒になって応援しあえるような対策が必要だと感じています」
ファシリテーターをつとめるジャーナリストの白河桃子さんが「ダイバーシティや女性活躍は、『産む』と『働く』を無視したら始まらない。いつ産んでも、いつ育てても、多様性のある働き方ができる時代がきます。それは、ここにいるみなさんが動かすもの」と力強くコミットし、参加者とのディスカッションへ進みます。皆さんからどんどん手があがり、「すごいパワーで、私たちもワクワクします!」と白河さん。
「産後の在宅勤務を導入する企業が増えている。1日に1~2時間仕事をすることについて、専門家からみた意見を聞きたい」「女性がキャリアを積んでいくなかで更年期があることを前提に考え、企業側がやるべきことは?」「働きながら更年期を乗り切ったみなさんの工夫は?」
議論が深まり、最後に発言したのは、参加者の席にいらした駐日タンザニア大使のブリアンさんです。「私はイギリス留学、国会議員などのキャリアを積む中で子どもを産んだことをシェアしたい。日本の女性が一人でも多く適切な選択ができるよう、心から応援したいと思います」温かいコメントに、大きな拍手が起こりました。
高校生からは「遠い先のことが一気に近くに感じられました」、管理職を目指しているという女性からは「更年期をうまく乗り切れるのかが今の最大の不安だったが、大きく軽減された」などのうれしい声もいただいた、充実の会議でした。
tukinousagi さん
ホルモンの波乗りと正しい知識
大会場でのセッション終了後、長めの休憩があったにもかかわらず円卓会議の会場前には開場前から長蛇の列が。今年は第20回ということもあり熱気に満ちていて、その雰囲気に背中を押されるように入場しました。司会の白河 桃子さんから「キャリアと出産、更年期」という長い時間軸のテーマで出産と更年期どちらに興味があるかを尋ねられ、会場の半分が出産、もう半分が更年期に手を挙げました。対馬先生の「女性はホルモンの波に乗りながら仕事も子育てもしている」という表現は実に的を射ているなと思いました。更にホルモンは脳をも守っているためアルツハイマー発症もホルモンが関係していると学びました。内山 成人さんは、会議中にホットフラッシュが出たら「今ホットフラッシュが出ているのでプレゼンができません」と素直に伝えることができる職場環境を作っていく必要性、じっと我慢の時代ではなく、仕事上でコミュニケーションを図っていく必要性を説かれていました。幼少時の教育で正しい知識を身に着ける必要があるとの大葉 ナナコさんの言葉に激しく共感。教科書により詳しい内容が載り男女共に理解が深まることは少子化対策に貢献するのではと考えました。
香月 美里 さん
出産も更年期もホルモンが大事
開場を待つ人の列が扉の前に出来ました。入場して会場を見渡すと300名弱ほどの椅子が用意されていましたが、あっという間に8割程、それも前方席から埋まっていきました。熱意・意欲がある人たちが集まっている会議だと実感する光景でした。
男性も1割程いました。出産と更年期というタイトルの円卓会議に男性が混じっていることに不思議な感じもしましたが、男性が女性のライフに興味を持つことは相互理解のためにも良い事だと私は思います。
4名の登壇者がそれぞれのお立場から、ホルモンには波があるが女性にしかない。ホルモンの減少の仕方も男女では全く違う、妊娠の基礎知識は何歳頃には持つべきか、原子卵胞数の減少について、閉経とは何かという、女性の身体と成長に関する解説がありました。この中で出産と更年期の凝縮された基礎知識を得られたと思います。
質疑応答は参加者の手が10本以上も上がる、熱気あるものでした。参加者自身が自らの身体について疑問だったこと、特に更年期を迎えるにあたって行うと良いことなどが交わされ、自分の身体と上手に付き合っていく方法を教わったと思います。
遥海空 さん
働く女性の健康管理について
この円卓会議では、まず4人の講師の先生より、女性のライフサイクルの観点から出産、育児、更年期について簡単にレクチャーしていただきました。出産・育児期と更年期の健康問題は、多くの働く女性が直面する課題であるにもかかわらず、事前に考えたり、情報を集める機会がなかなか無いように思います。女性と男性では加齢により性ホルモンの分泌が大きく異なるなど、科学的な根拠を示していただくことにより、女性の心身の変調についてしっかり理解することができました。また海外との比較も興味深く、日本のように産後1週間近く入院するのは世界でも珍しいことや、更年期女性の特徴的な症状のひとつであるホットフラッシュが、もし会議などのオフィシャルな場面で発症してしまった時のお話や、海外でのサプリメント事情など、日本との文化の違いを感じながら、新しい学びとなりました。これからの日本社会では、より多くの女性が、数々のライフイベントを経て、長くキャリアを続けていくために、健康管理や将来の心身の変調について、もっと気軽に話し合える場所やサービスの提供が必要になるであろうと思いました。
まゆみtm さん
出産問題を共有する風土の醸成を
「まず目の前のキャリア、いつか出産、そして待ってる更年期」…。大切な出産の問題に向き合うことを避けたまま40代に突入し、常に漠然とした焦りを抱いてきた私は「キャリアと出産」というテーマにぐっと心を掴まれてセッションを選択し、そして参加者の多さと熱心さにとても驚きました。
対策現場で奮闘される白河さんの「性教育という言葉が文科省で採用されたのが1999年、それほど日本は遅れている」というコメントは衝撃的で、今の少子化社会対策大綱では出産が女性だけの問題ではなく男性、企業にも「働き方」の変革を求める内容だとお聞きして、一刻も早くとの思いが強まり、個人的なきっかけから社会問題へと視野が開けました。
「制度があっても風土が無ければダメ」との問題提起では、私自身痛感したことがあります。とてもデリケートで個人的と感じる出産・更年期についての当セッションで何人ものスーツ姿の男性参加者を見かけ、不快な違和感を覚えていたのです。セッションを通じて自分も「出産は女性の問題」という日本の「精神風土」に染まっていることに気づき、議論の場の半数を男性が占める状況を共に積極的に醸成せねばと意識を新たにしました。
takeo さん
女性ホルモンの恩恵
「私たち女性の体は女性ホルモンによって守られている」─私自身にとっては初耳の話でした。出産は経験済みの30代の私ではあるけれど、「更年期」や「ホットフラッシュ」などの現象について知識は皆無でした。
そんな私に衝撃的だったのは、男性の男性ホルモンは年齢を重ねるとともに分泌が徐々に減るのに対し、女性は閉経と同時に女性ホルモンがゼロになってしまうという事実。私たちが出産可能な期間に病気になりにくくしてくれているこの女性ホルモンがなくなることで、それまで経験しなかった病になりやすくなる…私の健康がこんなに女性ホルモンの恩恵にあずかっていたなんて!
また角度を変えると、5歳になる娘を持つ親としての立場からも、女性ホルモンと体の話はとても興味深く、大葉先生の提唱する「授かってよかったと言える妊娠」を次の世代に繋げていけるよう、性教育に役立てたいと思いました。
この円卓会議を通し、将来のために、ひとりの女性として、母として、今の私に何ができるのかを考える機会ができました。ありがとうございました。
紅うこん さん
身体と人生の繋がりを再認識
会場入り口には、全体会議が終わるとすぐに長蛇の列が出来、皆さんの関心の高さが窺えました。開始時刻には満席近くとなり、男性や制服姿の方々も見受けられ、幅広い層からの議題への関心の高さを実感しました。まず4名の先生方から自己紹介と合わせてホルモンのお話や、出産・更年期に関する基本的なお話を伺いましたが、この時点ですでに私は自分がいかに無知であったかを痛感しました。特に、女性ホルモンが新しい生命を宿す役割だけでなく、女性自身の身体や命を守るという重要な役割を果たしているという話には目を開かれる思いでした。今回の私の参加動機は、高齢出産の年齢となり今後キャリアと両立できる二人目出産のタイミングに何か参考になればというものでしたが、そもそも、自分自身の身体についての正確な知識、更年期を含めた将来の身体や体調管理に関する意識という根幹となる部分が抜けていることに気づくことができました。つい自分の身体への意識は後回しにしがちでしたが、終盤に出た「自分の身体と向き合い、コントロールし慣れることが、自分の人生を生きることにつながる」というメッセージが、深く心に響きました。
サチコ さん
正しい知識で自分を大切に!
テーマについて「分かっているようで、分かっていない」「正確な知識があるかと言えば、そうではなく」「なんとなく、どうにかなるのでは」という、感覚で過ごしてきたのが30代前半までの私です。妊娠経験もなく、そのまま過ごしてきてしまったというのが正直なところです。しかし、その後このままではいけない!日々を思いっきり過ごす為にも、自分の体を大切にしよう!と思い、この円卓会議に参加しました。その中では、やはり「正しい知識を持ち、自分の体は自分で守る」事の重要性を改めて感じました。きちんとした知識があれば、日常生活で改善・予防ができ、また、今は科学の力を上手に利用する事で、心身共に辛い思いをせず、快適に過ごす事も可能です。「今は我慢の時代ではありません」「しまった!ではなくよかった!と思える妊娠を!」という講師の言葉も印象的でした。女性が仕事を持ち、社会に出るようになった今、女性の体について発言出来るようになったのも事実ですが、海外ではプレゼンしていた女性が「今、ホットフラッシュです」と発言し、中断を入れた事もあるとか。「自分の体」と「社会環境」、正確な知識と改善がそれぞれ重要だと感じました。
たろまる さん
自分の健康ときちんと向き合うことの大切さを痛感!
出産と更年期とありますが、女性の一生の健康にかかわることをカバーしていたという印象です。対馬先生が、女性ホルモンの働き・重要性を年代ごとに特徴を説明してくださり、かなり思い当たる症状があったので、女性ホルモンの影響の大きさを実感しつつ、自分が知識不足であったことを痛感しました。若いうちから自分のからだときちんとつきあっていくと更年期のダメージも少ないとのことで未来への備えもしていきたいと考えています。また女性ホルモンの働きと症状を理解したうえで、「(症状を)我慢するのではなく、サプリメントなど科学の力を上手に使っていきましょう」と対馬先生、大葉さんが仰っていたことが印象に残りました。
対馬先生が「性差医療」という言葉を使われていましたが、性差からくる健康への影響は確実にありますし、異なる性についてはお互いに知らないこと、想像力が及ばないことがあると思います。この溝は伝えていかなければうまらないですし、自分自身の健康状態をきちんと説明できるようになっていきたいと思えた円卓会議でした。
にしひがし さん
更年期に向き合う知識
ほぼ満員で、皆がとても関心をもって会議に参加されていました。出産に関することを学びたい方と更年期について学びたい方が半々くらいの感じでした。講師の先生方からは、出産に関する教育を男女学生に取り組んでいる、という話を伺い、とても大切な事だなあ、と思いました。多分、親の世代では、20代で子供を産むことが当たり前だったので、改めて出産に関する教育を受けるという発想自体がなかったのだと思います。今回の会議で少し物足りなく感じたのは、HIVなどの感染症のリスクなども出産と関連した大切なテーマだと思っています。そういう面も含めてお話をしていただきたかったと思いました。私たち女性は、出産に関する情報は、妊娠すると母子手帳や様々な小冊子で得ることができますが、働く女性が、出産後の体調ケアや、乳児の健康や自らの乳がん予防のためにも、授乳を続けながら働ける環境も整えていくことも、とても大切だと思いました。更年期に関しては、学びは、講師の先生が、働きながら自らをコントロールするために(閉経後、女性ホルモンの急激な減少により、免疫力の低下から遺伝的な病気にかかりやすくなる)、ピルやホルモン療法をしている、というのを伺い、自分も婦人科に行ってみようと思いました。
yubokumin さん
タンザニアの女性が教えてくれたこと
20年の節目である国際女性ビジネス会議にピアとして初めて参加させていただきました。会議のメインテーマは「Make History」。この日への期待感が講演者、参加者、会議運営に携わるすべての方々と一丸になっている実感があり、有意義で充実した一日でした。午後に参加した円卓会議は「キャリアと出産、更年期」。働く女性が抱える様々な問題をテーマに進行役の方を含めてテーマに沿った現状と問題、それに対しての解決策などが講師陣からなされました。質疑応答では数多くの方からの意見があり、中でもタンザニアから参加された女性がキャリアも大切にし、パートナーの理解を得て彼女なりのいいタイミングで出産できたこと、この円卓会議の参加者たちへ「自分なりの選択を大切にして欲しい」と送った応援メッセージから、国は違っても女性が抱える悩み、それに対して自分らしく立ち向かうことの大切さを感じることが出来ました。
Hope & Faith さん
からだもキャリアも自分で守ろう
女性は産む側の性であり、男性と同じ条件でキャリアを積むのは難しいと日頃から考えていたので、この円卓会議に参加した。誤解を恐れずに言えば、ライフ・イベントを利用してキャリアを積んでいく方略なども意見交換として出たら楽しいなと想像した。会場には若い人から熟練層まで参加していて、自分のこととしての関心が高いトピックなのだと感じた。スピーカーのお話の後、フロアからは自分の体の問題に引きつけた個人的な内容を専門家に尋ねるという質問が多く出され、正直驚いた。自分の疾患や更年期障害について、公の場で堂々と質問する人たちを目の当たりにし、普段、信頼できる医療者にコンサルを受けることはできないのかなと少し居心地悪く思った。感動したのは、スピーカーの方がそれぞれの質問に丁寧に辛抱強く対応していたことである。私は男女とも、もっと自分の体について知ることで、「いのち」を大切にすることにつながり、そうした教育を子どもの頃から専門家が行っていくことが重要と考えている。医療従事者である自分はそういう視点で社会に貢献したいと強く感じた。キャリアもからだも自分で守るもの。そのためにはますます啓発や情報共有が必要である。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。