円卓会議 301
Is Japan getting its message across?
小野 由美子さん
加治 慶光さん
日本の発信は、世界の国々に理解されているのか。グローバルな舞台で、日本がより効果的なコミュニケーションを行うためには何が必要なのか。海外メディア、日本のメディア、そして政府の広報という立場のスピーカーを迎え、さまざまな角度からディスカッションを行います。
開口一番、「会場のみなさんに聞きます。5年前に比べて、世界が日本に興味を持っていると思う人?」との問いに、会場の約半数の手が上がります。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版編集長の小野さんは、「5年前よりも多くの関心が日本に注がれている。その理由は、震災、復興、アベノミクスなど様々だが、とりわけ二度目の首相の座に着いた安部首相を海外メディアが取り上げる機会が多く、彼が日本経済を好転させることができるかどうかに注目が集まっている」と語ります。
「小野さんの言う通り、ここ数年は日本への関心が高まっている」と、NHK国際放送局 英語キャスターの高雄さんも同意。世界の人々に日本のことを伝えたくてキャスターになったと言います。「日本の強みは、テクノロジーや職人芸、おもてなしなどのハイクオリティ。弱みは、受動的、曖昧な態度、ビジネスでの交渉に弱いなど。コミュニケーションにおいては弱みも表明することが大切」と、会場との対話をまじえながら語りました。
続いて、内閣官房総理大臣官邸内閣参事官(国際・IT広報担当)の加治さんは、海外への発信のために、震災の48時間後には英語のTwitterを、10日後に英語のFacebookを立ち上げたこと。そして、安倍政権におけるグローバルコミュニケーションの3つのチャレンジ、1)国内での高い支持率、2)強い意志を示すこと、3)世界の国々からの認知・信頼を得ることなどを説明しました。安部首相がしばしばスピーチで口にする「TINA(There is no alternative.)のエピソードなども、会場のみなさんは興味深そうに傾聴している様子。
「日本が発信するメッセージが海外で理解されていると思う人?」と、ファシリテーターのアルトマンさんが問いかけると、なんと一人も手が上がりません。「ゼロですか?」と思わず笑いが起き、「もっと上手くコミュニケートできるはずと思う人?」には大多数が賛同しました。
なぜ日本の発信は効果的でないのか、どうすればもっと上手くいくのか。会場とのインタラクティブなディスカッションでは、原発報道をめぐる日本のメディアの在り方から、記者クラブの問題、日本語から英語への翻訳・通訳の困難さ、能動的にはっきり意見を述べること、リーダーが英語でスピーチすべき、弱みを表明し説明することで理解させ強みに転換することなど、幅広い角度から意見が交わされ、濃密な対話の時間が瞬く間に過ぎ去りました。
高雄 美紀さん
アルトマン京子さん
個人から国レベルまで、コミュニケーションはリーダーとなるための真髄。今日ここで、グローバルコミュニケーションにおける国レベルのチャレンジを知り、メディアの第一線で活躍する方の声を聞き、経験豊かな仲間の発言に学び、意見を交わした参加者のみなさんは、きっと次の一歩への手掛かりをつかんだことでしょう。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。