円卓会議 203
ダイバーシティ経営。女性役員の参画で何が変わるのか。The boards.
石黒 不二代さん
金野 志保さん
「2年前の国際女性ビジネス会議でこの話題を取り上げたときは、30人くらいしかこのテーマを選びませんでした。おそらく当時、日本最先端の会話だったのでは? 今日はなんとその10倍、300人が選んでいます!」
ファシリテーターを務める佐々木かをりがこう切り出すと、会場の熱気が一気に高まりました。
世界的にみても、企業における女性役員の割合が圧倒的に低い日本。近年、ようやく取締役・監査役等に女性を参画させようという動きが高まってきました。始めに弁護士の金野志保さんが、ヤフーなどの監査役を務めた経験から「女性がボードに入ることで変わること」について語ります。
「女性の方が、一般的には清濁併せ飲まない清廉さがある。悪しき慣習などに声を上げることができる。そして、共感力を発揮しながら発言することで、会議が明るく柔らかい雰囲気に変わり、みなさんが発言しやすくなる。また、ロールモデルになることで女性が活躍しやすい場をつくることができます」
大塚製薬で常務執行役員広報部長を務める笠章子さんも、「女性が役員に入ることで健康な議論になる」と言います。
「つまり、“異論”を聞いてもらう環境ができていくんです。大塚製薬ではダイバーシティを成長戦略の大命題として掲げています。情緒的な話でなく戦略として、多様性を取り入れる発言の場をつくり、変革を続けなければ企業は成長できません」
続いて発言したネットイヤーグループの代表取締役兼CEOである石黒不二代さんは、「女性を取締役会の何割にしなければいけないといった、いわゆるクォータ制にはあまり賛成ではない。基本的には男女問わず実力で評価されていくもの」という考え。しかし一方で、「保守的な大企業の話を聞くと、イノベーションを起こす必要条件としてなんらかの形で楔(くさび)を打たないと変わらないのではと感じる」とも語ります。
「今日は紅一点ならぬ黒一点の存在で、大変ハッピーな気持ちでおります」とにこやかに切り出し、会場の笑いを誘ったのは富永誠一さん。日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークで理事・事務局長を務め、コーポレート・ガバナンスの啓蒙、ボード・ダイバーシティの向上に注力しています。上場企業の女性役員の割合が、日本は42か国中38位というショッキングな数字を示し、「ステークホルダーが多様化している今、多様性がない経営は非常に危険」と警鐘を鳴らしました。
富永 誠一さん
笠 章子さん
佐々木 かをり
後半はたっぷりと質疑応答の時間を取り、10名ほどの方から次々とテーマが投げかけられます。「中小企業でもダイバーシティ経営は可能なのか」「ダイバーシティ経営は意見の調整に時間がかかり、スピードが落ちるのでは?」「ボトムアップからのアプローチで企業の意識を変えていくためにどんな施策が有効?」
深まる議論に、スピーカーたちも白熱していきます。時間ぎりぎりまで数々の具体的な事例、提案がシェアされた濃厚なディスカッション。佐々木が「企業のトップが変われば、日本の明日がどんどん変わっていく。そのために、みなさんも積極的に発信する人になっていってほしい」と力強い言葉で締めくくり、多くの参加者を集めた注目の円卓会議が終了しました。
smile さん
女性役員の参画により必ずやプラスの結果が生まれると思っておりましたが、この円卓会議に参加して、改めて再確認ができました。同時に、ダイバーシテイ経営を採用していない企業はなぜ未だに多いのか、とても不思議でなりません。従業員が努めて役員に這い上がっていくことは大変時間がかかると思いますので、今回の会議では、会社の経営陣らもたくさん出席していたことを願います。そして、自分自身も本当に会社を、日本をよくしたいと思うならば、役員になれるまでキャリアを積んで行きたいなと強く思いました。今回のパネルデイスカッションのみなさんは既に役員の世界を見ていらっしゃるので、大変な努力があったのだろうなと思いますが、役員になるまでのコツなどをもう少しお聞きしたかったと思います。この円卓会議で目標とする女性のみなさんと出会うことができ、大変心強かったです。私も自分がリーダーとなることで、私の周りにもリーダーとなる人が増え、活躍する女性が増えていくことを期待したいと思います。なんだかとってもワクワクしてきました。
ひろこ さん
広い会場にたくさんの人、人、人。この円卓会議は300人も集まっているという。やはりテーマ興味深い。
まず、女性役員のメリットについての話があった。【清濁をあわせ飲まない・正義感・悪しき慣習、組織の理論に染まっていない】のっけから、うなずきまくってしまった。【やわらかさ・柔軟さ・共感力】これはやはり女性が本来もっている特性だと思う。ただ現状では社内育成はまだ進んでいないので社外役員から入る場合が多いようだ。それでも世界各国からみた日本の女性役員の割合はかなり低く、日本より少ない国はアラブ諸国になるとのこと。これから、上位を目指し甲斐があるデ-タだ。
質問の時間になると、あちらこちらで手があがる。そのなかでも印象に残ったのが、【上り詰めるためには何らかの専門性を持つ】ことが必要という言葉だった。企業のなかでオールラウンドプレーヤーになるよりは、これは誰にも負けないというものを持つ。そして、やっぱり【男性の協力】!これをなくしては、これからより一層もとめられていく女性の社会への進出は進んでいかないのだと改めて思った。
シロ子 さん
30年近く外資系の会社で働いてきましたが、海外では女性役員や幹部が多いのに、日本だけ女性役員がいないことが問題となっており、15年前に取り組んだダイバーシティ・プロジェクトを再度立ち上げることになりました。お話をを伺って、社会的にもダイバーシティの推進が加速するであろうこの時期のプロジェクトの再結成は、よいタイミングであったことを再認識できました。また、足りなかったものが何か少し見えてきました。多様な意見を取り入れる職場環境作り、株主に説明できる事例。。。課題は多いのですが、参考にしながら、少しずつ取り組んでいきたいと思います。
Hazel Nuts さん
女性役員登用の利点として、女性の方が洗練された正義感がある、企業の悪しき慣習に染まっていない、会議の雰囲気が柔らかくなる、女性の共感能力が発揮される、などが上がりました。最大の利点は、「女性活用がしやすくなる」ということでしたが、聞いていて納得できました。女性が取締役会に参加することで、ダイバーシティ経営が加速する、イノベーションを起こすためにはダイバーシティが必要、異質なものが入ることによって変化が起こる、など、女性役員登用は、女性活用に限らず、成長戦略やダイバーシティに関わるものなのだと議論が広がりました。多種多様なステークホールダー(顧客、株主など企業を取り巻く人々)に対応するためにも、女性役員は必要であるというコメントもありました。ただし、登用して放っておかない、育成し仕組みの必要性が挙げられました。また、日本は横を見て比べるが、優秀な女性を積極活用するためには人事制度を透明化するという課題や、女性活用度を開示することを企業に義務づけるという提案もありました。
Willow さん
お話を伺いながら、ダイバーシティは経営の考え方であるため、経営層に女性役員がいることは、女性のロールモデルとなり、女性活躍への支援者となるなど、女性にとって大きな望みにつながると思いました。さらに経営においても違う視点がはいることにより経営に利点があることも理解しました。
しかし、経団連の会員企業1,300社を対象にして行った「女性活躍支援・推進等に関する調査結果」( 2013年社回答率26.8%)において、約3割の企業に女性役員が1名以上登用され、このうち約1/3の企業では複数の女性役員が存在するという結果が出ていますが、「GMIレーティングス(GMI Ratings)」(2013年)世界各国の企業における女性役員(取締役・執行役員)比率を調査した結果によると、日本は1.1%と世界最低水準となっていて、ダイバーシティ経営がすすんでいない実態があります。
ほとんど諦めに近い中、お話の中にありました、一株株主になって株主総会で「御社のダイバーシティ経営はどのようになっていますか」と質問する良い方法をお聞きしました。小さな試みの積み重ねが経営を変える、ことに望みをかけてぜひ実行しようと思います。
高野 美佳 さん
私は「女性のキャリアを支援して女性が活躍できる社会を実現したい」という強い想いを社会事業で実現したいと思っています。そのために現在、大学院で「ジェンダー・ダイバーシティ」について研究しています。この円卓会議では、実際の女性役員の方々の生の声を聞くことができて、とても有意義でした。政府が女性活躍推進を大きく宣言し、企業に最低1人の役員を、と推進している中、この会議はタイムリーでした。女性役員の参画の利点としては、組織の論理に染まっていない女性が入ることによって悪しき慣習を無くすことができた、会議の雰囲気が柔らかく明るくなり、発言しやすい雰囲気になった、グローバルの機関投資家はダイバーシティを見ている、などです。女性が企業の役員メンバーになるということは企業価値を高めることだということを、実際のロールモデルの話を聞くことによって確信することが出来ました。
鴨谷 香 さん
「これからは多様性ある組織のみ成果を出せる」、「女性ならではの観点が活かされる」・・ダイバーシティ経営の利点は様々な言葉で表現され、経営戦略として必要なのだという認識は一般化しつつある今日。しかし、私の周りでは、できる人、できる組織にはできるけど、「そんなこといったって実際は難しいよ」という声をよく耳にします。この円卓会議ではそんなやや抽象的なイメージが、経験者の皆様のお話から「実際に女性役員参画」が具体的な変化、目に見える成果として認識された時間となりました。私が個人的に一番印象的だったのは笠氏の実践です。新卒で大塚製薬に10年勤務し、30歳でその当時売り上げの3分の1を占めていたポカリスエットのブランドマネージャーを担当され、転職後13年を経て再入社し、常務執行役員として同社の変革をリードされています。このようなご経験の方が経営に関わり、会社の「変わろう」という強い意志を支え、同社の「自分たちにしかできない貢献」を追求され、20年で3.5倍の成長を実現されたのだ、と圧倒されました。柔軟性があり、会社の「本気」を感じたお話でした。一人でなんでも考えるよりみんなで考えた方がリスクが下がる、とこれからの組織の在り方や、株主として女性参画への取り組みについて問うことで女性の会社の意思決定への参画に関わることができることも認識できました。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。