円卓会議 104
起業する!自らのアイディアで社会を動かす
安藤 美冬さん
駒崎 弘樹さん
インターネットの活用などにより、さらに柔軟なスタイルが可能となっている「起業」。この円卓会議では自らのアイディアで起業し、社会を動かしている3人の方にご登壇いただき、具体的な事例、そして志を、会場のみなさんとともにシェアしていきます。
ファシリテーターを務めるのは、日本ベンチャー学会事務局長であり、NPO法人生活創生研究所 代表理事長の田村真理子さんです。日本経済新聞社に在籍していた頃から多数の起業家の取材・調査を行い、現在も起業家の育成や啓蒙を進めている田村さんが、3人の方の体験談を掘り下げていきます。
株式会社HASUNA 代表取締役兼チーフデザイナーの白木夏子さんは、大学時代にインドで鉱山労働に従事する貧困層の人たちと接したことが起業のきっかけとなりました。
「私たちが楽しむジュエリーのために、5、6歳の子どもが働いている。この矛盾を解決したくて会社を立ち上げ、鉱山労働者の生活を守る取り組みを始めました」
Ethical(人や社会、自然環境に配慮した)なジュエリーブランド事業を立ち上げて5年。日本にはほとんど認知されていなかったコンセプトが、現在は次第に普及しつつあります。
株式会社スプリー代表取締役の安藤美冬さんは、ソーシャルメディア発信の学校、大学講師、ジャーナリストなど肩書きにとらわれない多彩なジャンルの活動を行っています。もともとは大手出版社に勤務しており、3年前、30歳になったのを機にフリーランスに。
「モジュール型ワーキングと呼ぶ方がいるんですが、複数の仕事を組み合わせることで、ひとつの組織で働くよりも安定を手に入れる。こんなやり方もあるんだということを発信し、起業のハードルを下げたことに自分の意義があるのかなと思います」
続いて、10年前から病児保育を軸とした事業を展開し、保育園の規制も動かした認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さん。ベビーシッターをしていたお母様から、子育てをする働く女性たちの厳しい状況を聞かされたことが起業につながったと語ります。
「大学時代には、ITベンチャー企業を立ち上げていました。世界でもなかなか例がない訪問型病児保育が実現できた強みは、僕が保育業界の人間じゃなかった、つまり『多様性は力』ということだと思います」
後半のディスカッションでは、「企業の中で新規事業として進めるのではなく、自分で起業する意義とは?」「人を集め、ミッションを作るにあたっての仕組みづくりとして具体的に実践したこととは?」など、みなさんから積極的に質問が投げかけられました。
白木 夏子さん
田村 真理子さん
「会社員時代より自分の夢に忠実に走っていける状態」「不安はあるが、情熱が恐怖を圧倒する瞬間がある」など、力強い言葉にあふれたひととき。田村さんが「みなさんに共通しているのは、常に自分が何をやりたいのかを探し、問題を解決するために現場へ行っているということ。今日は本当に密度の濃い意見をシェアできたと思います」と締めくくり、前向きな力を得たみなさんからの熱い拍手で会議は幕を閉じました。
Willow さん
「起業家」と言われて私が思い浮かべるのは、ヒルズ族であったり、スティーブジョブズやマークザッカーバーグのようなカリスマ的な起業家でした。
しかし、今回登壇された3名の方は、「世界から貧困をなくしたい」「社会の不条理をなんとかしたい」「新しい働き方を求めた」などの社会貢献的な意義を「起業」に見出されていて、私の「起業」に対するイメージが変わりました。
社会が求めていることに、たおやかにしなやかに対応されて「起業」へつなげてこられた。その結果、社会から共感が得られて、支持されている。「多様性は力になる」ことを実感され、人が求める働き方を推進する企業は、社会から支持され優秀人材が集まって来る、というお話には、たいへん共感しました。
そんな起業への険しい道のりが多くありながらも「働きながら人の幸せに貢献できる幸せがある」との言葉にグッときて、私はなにが貢献できるのだろうかと自分自身への問いかけの機会になりました。
広原 かおり さん
起業=勇気、決断、エネルギーの多くを必要とする事というイメージでしたが、講師の方々のお話を伺っていると「誰かの役に立ちたい」という素直な気持ちがきっかけで自らのアイディアを形にされている事に共通点がありました。
自ら興味がある事へは、自分の足で出かけ、心で感じる=現場を知る大切さ。1つ1つの仕事を積み上げていく力。企業の中では発揮する事が難しいかもしれないオリジナリティを自らの力で1つの仕事として作り上げたもの。それこそが「起業」もちろん、数多くの苦労や挫折も経験されている中、継続する事が出来たのは、今の仕事を「愛しているから」また、これからの「夢」があるから。「愛」や「夢」は人を動かす大切なエネルギー。
「自分が折れない限り続けられる」この言葉こそ自らの仕事を愛し、発展させ最初に夢みた「誰からの役に立ちたい」の原点に戻れるものではないでしょうか。
「働きやすさと働き甲斐」起業する事で得られる己の本来の姿。人と人との触れ合いを大切に、自らの「知的生産」を高めていく。それこそが「起業」の魅力なのかもしれません。
yonesuke さん
なんて楽しそうに話をする方々なんだろう!3名の起業家の方々を見て感じた第一印象だ。
私は、長年フリーで声の仕事をしてきたが、実は副業のアルバイトもし続けている。やはり、安定がほしいのだ。保険をかけておきたいのだ。しかしながら、そのために自分のスケジュールが動かせないというジレンマを常に抱えていた。時には、アルバイトを動けない言い訳にすら使っていた!
会議では、何の言い訳もせず、自分で100%リスクを引き受けながら、自分の信じた道を歩く姿を見た。なんて清々しいのだろう・・・見ていてわくわくする、楽しそう!そう感じた。安藤さんがおっしゃった「小さな仕事を組み合わせて、リスクヘッジすること」、駒崎さんがおっしゃった「やるリスクもあるが、やらないリスクもある」という言葉、白木さんがおっしゃった「今は一児の母です。子育てするなら起業する方がいい」が印象的だった。
自分も、子供がいることを言い訳にしたくない、安定に逃げたくない。好きな仕事ができているのだから、私も、人をワクワクさせられるような人間になりたいと思った。
smile さん
なぜ起業したか、社会に影響を与えたことは何かについて、若い起業家3名による経験談をお話しいただきました。
3名ともに共通していたのが、人は色々な生き方があり、やりたいことをやることが人生しあわせであると考えていること、また、起業当初はわからないことだらけだったが、周りにも頼り、なんとかなるさという精神で起業を実現できたという点。
MBAや専門知識がないと起業は難しいのではと思っていましたが、起業のハードルはそんなに高くないのではという気持ちになり、自分も会社の組織にいながら夢を実現するのか、起業して夢を実現するのか、よく考えてみようという気になりました。
また、起業の醍醐味として、仕事と子育ての両立がしやすいという点に、今の社会ならではの起業の魅力を感じました。リスクは高いかもしれませんが、アクションしないことの方が後悔につながるということに大変同感でき、自分自身のエネルギーに繋がった気がいたします。
今回、注目されてる3名のお話をゆっくりお聞きすることができ、また、本当に知りたかったことを聞くことができて、とても素晴らしい時間をいただきました。
829 さん
エシカルジュエリーのジャンルを確立されたHASUNAの白木さん、訪問型病児保育の先鞭をつけられたフローレンスの駒崎さん、肩書きや専門領域にとらわれず多種多様な仕事を組み合わせる「モジュール型起業」を発案、実践されている安藤さん、三者三様の起業について、田村さんのファシリテーションによりきっかけや志、経験をシェアいただきました。お三方ともその活躍がメディアで紹介されているのを見聴きしたことがありましたが、生でお話を伺うことにより、強く胸に刺さるものがありました。共通していたのは、成し得たい志というぶれない軸を持ち、あきらめなければなんとかなる、と楽観的に、前向きに走り続けている、その姿が同志や仲間を巻き込み、人々の共感を誘い、事業としてうまく回っていること、でした。
大手企業で勤続20年。業績悪化によるリストラや担当業務の変更が相次ぎ、自分とは無縁と思っていた起業も、今後の職業人生の選択の一つとなりうると思い始めたタイミングで話をお聴きでき、自分が起業するとしたら…と現実のこととして考え始めるきっかけとなりました。卓越したジャンルなどない自分にも可能な起業スタイルがあるのではないかと。
高野 美佳 さん
私は社会起業家を目指していますので、とても興味深かったです。特にNPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんのお話は心に染みました。起業は自分で折れない限り今すぐできる。やるリスクよりやらないリスクの方が大きい。やって良かったことは、生きているという感覚をいつも感じていられる、人の幸せに貢献できているという実感があるということです。私も「女性のキャリアをサポートして女性が活躍できる社会にしたい」いう強い想いがあります。この想いを何とか形にしたいと思っています。資金繰りや会社の仕組みづくりについても赤裸々なお話をお聞きすることができ、大変参考になりました。起業当初は事務所も借りられず、スターバックスでコーヒー一杯で開店から閉店まで仕事をしていたそうで
す。それが今では政府まで動かして法律まで作るNPOになり、多くの働く女性の力になり、はたらきがいのある会社ランキング(GPTW)の上位にランクインですから素晴らしいと思います。私も駒崎さんのような起業家になりたいと強く思いました。
シロ子 さん
何かはじめたいという思いもあり、このテーマを選択しました。安藤さん、白木さん、駒崎さん、起業した理由は違いますが、社会に貢献する、現状を変えたいという志がイー・ウーマンと通じるものがあり、たいへん感銘を受けました。
一番驚いたのは、男性である駒崎さんが病児保育問題を解決したいという思いから起業されたことでした。私自身、子どもが小さい頃は熱を出すことも多く、その度に会社を休まねばならず、職場の方に申し訳ないという罪悪感を持ちながら働いてきたので、その必要性はよくわかります。
みなさんのお話を伺って、「世の中のニーズとやりたいことが一致して、はじめてビジネスが成立する」これは大企業であれ、起業家であれ同じであること。そして、私ができることは何なのか真剣に考えるきっかけをいただきました。
オバナ さん
一言で言うと意外でした。企業家の方々は熱い情熱のもと、善は急げとばかりに思い立ったらすぐ行動しているという勝手なイメージを持っていました。でも、お話を伺ってみると、実際には熱い情熱と行動力を持ちながらも皆さん、起業に向けての準備を数年かけて着実にやっていたことが意外でした。どんな仕事も計画的に行うことの大事さを説いていただき、今まで自分は何も見えてなかったなと痛感しました。
私は、小学校・中学校と親の仕事の都合でタイに住んでおり、自分を育ててくれたタイにいつか恩返しをしたい、いつかタイと日本をもっとつなげられるような仕事をしたいという思いから、起業にも少し興味があったのでこの円卓会議に参加させていただきました。今まではぼんやりとした希望的な考えでしたが、今回、改めて考え直すいい機会でした。「『働きやすさ』と『働きがい』は二者択一ではない」と言っていただいたこと、「自分が折れなければ続けていける」と言っていただいた言葉を胸に刻んで、これから自分の思う道へ新たな1歩を踏み出したいです。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。