「午前中のセッションで、キャシー松井さんは、日本が女性の雇用を増やすことでGDPを15%伸ばせるとコメントされたが、現実には今も大きなジェンダーギャップが存在します。このセッションで、さらに深めた議論をしましょう」と、ファシリテーターのアルトマン京子さんが呼びかけ、英語によるセッションが始まりました。
モニカ・カイザーさん
モニカ・カイザーさんが、ご自身の体験から専門性を持つことの重要性、自分のキャリアにとって最良の人と結婚することの大切さを語ると、早速アルトマン京子さんが、会場に「専門職の人は?」「最良の男性と結婚した人は?」と問い掛け、元気よく手が挙がります。早くもインタラクティブな時間がスタート。
日本での最大のジェンダーギャップは、「トップのポジションに女性が昇進できないという問題」とモニカさん。それを解決するには、「まずパイプラインづくり、そして会社の中では男性のメンターを持つべき。メンタープログラムやダイバーシティトレーニングプログラムも重要」と言います。
それを受けて、アルトマンさんが、ご自身のゴールドマンサックスでのご経験から、全社的なダイバーシティトレーニングプログラムに参加したことで、さまざまなチャレンジや意見に刺激を受けたことを話すと、会場から複数の手が挙がり、それぞれの団体や企業におけるダイバーシティプログラムの実情や問題点がシェアされます。
続いて、会場の男性から、「政府が出来ることは何か?」との質問には、「政府自身が民間企業に対して良い例を示すことができるはず。労働時間を短縮し、クオータ制を導入し、“イクメン”を奨励し、パートタイム労働者を正規雇用にするなど。英国ではキャメロン首相に子どもが生まれた時、彼自身が確か6週間の育児休暇をとった。そういうリアルアクションが良いモデルになる」と、モニカさんが力説。
アルトマン京子さん
南アフリカ共和国の大使館で働く女性が、日本よりももっと複雑なジェンダーイシューの中に置かれている体験をシェアし、会場のみなさんがじっと聴き入る場面もありました。 また、20代の女性の、「未来の夫は仕事をサポートすると言っているし、会社は20代の私に役員のポストを約束してくれた。でも、自分自身に何か“おそれ”ような気持ちがある」という発言に対し、アルトマンさんは、「母親になることや家庭を切り盛りすることを学ぶことは、仕事においても意味がある。より成熟し、賢くなり、寛容になり、忍耐強く、より良いコミュニケーターになれる。人格的にも成長する」と、ご自身が励まされたという言葉を、温かく伝えてくれました。
フランス、北欧などのさまざまな先進事例がモニカさんから語られる内に、時は既に終盤へ。最後は、「日本の男性のメンタリティを変えることが急務である」ことに、多くの参加者が賛同し、力強い拍手で締めくくられました。
Hazel Nuts さん
パリのOECDから来日されたモニカ・カイザー氏を迎え、女性のキャリアを中心に、ジェンダー・ギャップについてのディスカッションが展開されました。全体講演でもそうでしたが、カイザー氏は専門性を持つことの重要性を強調されていました。また、若い女性たちが大学で適性の学部に行けるよう励まし、支援する必要性にも言及されました。
企業のトップ層が女性活用にコミットすることが必要だが、同時に女性側の「自信」にも問題があるのでは、という話題になりました。特に女性の場合、「野心的」=「危ない」と思もわれがちであり、企業の中で上に登って行くことに躊躇する傾向があるそうです。しかし、カイザー氏は、「上に登って行けば行くほど、組織内の機能を変える力を得ることができる」と力強く語っていました。
結婚を控え、今後のキャリアと私生活の舵取りに迷いを感じているという参加者に対して、カイザー氏と進行役のアルトマン京子氏は、その葛藤は世界中の女性が抱えているものだと共感を示していました。どんな国、どんなポジションにいる女性でも、同じように葛藤し、悩みながらも前進しているのだと、その場にいた女性全員が感じた瞬間だったと思います。
注)出演者の肩書きは開催当時のものです。